起業して5年、業績も順調で知り合いの経営者からは上場狙えるんじゃないの?なんて、お世辞でも嬉しい事も言ってもらいまして。
このあたりで真剣に会社の将来の事を考えていこうと思ってます。そのためには経営幹部のみんなにも自社株を持ってもらったほうがいいなと考えているのですが、会社もだいぶ成長してきたのでウチの会社の株価も変動していると思います。株式の譲渡について、税務の専門家に聞いてみました。
業績も順調で、おかげさまで設立から5期連続増収増益で決算を迎えられそうです。
そうですね、起業して3年くらいは人の出入りも多かったですが、ようやく会社を担っていく幹部と言えるようなメンバーも固まってきました。
はい、知り合いの経営者からは上場も狙えるんじゃないか。なんて事も言ってもらいましたけど、上場はかなりハードルが高いんじゃないかなって気もしています。
そうですね、上場審査では単純に業績が良いだけではなく管理体制など多くの基準を満たす必要がありますので、正直ハードルは高いですね。
※LINEも上場!会社設立時から知っておきたい上場審査基準のこと
https://bizer.jp/archives/2184
実際、上場を目指すかは分かりませんけど、今の幹部のメンバーにはもっと一緒にこの会社を成長させるためにコミットしてもらいたくて、自分のもっている自社株を少し渡して経営に参画してもらおうかなと思ってまして。
非上場株式の2つの株価算定方法
幹部メンバーには自社株の何%くらいを渡す予定ですか?
そうですね、3%とか多くても5%くらいかなというイメージです。
それであれば「配当還元法」で安い株価算定ができそうです。
ん??何%の自社株を渡すかによって株価が高くなったり安くなったりするんですか?
正確には幹部の人達が何%の自社株を「受け取るか」によって株価の計算式が異なります。
上場していない会社の株式は持っていてもなかなか売却することができないので、その株式を持ち続けた時にどんなメリットがあるかという「保有価値」を考えます。
「保有価値」ですか。幹部たちに株を渡してあげたら株主として経営に関与できるのかなと思っているのですが、ウチの会社の株を保有する価値ってそういう事であってますか?
株主が経営に関与したり、会社の意思決定に関与するためには、ある程度の%の株を持たないといけません。
LINEの株をちょっとだけ持っていてもLINEの経営に物申す事ができないのと同じで、非上場会社の場合でも、親族等を含めて
(a)過半数の株式を持っているか
(b)15%以上の株式を持っているか
などによって経営に関与しているか否かを判定します。
形式的な判断にはなりますが、親族であれば一致団結して議決権を行使できるだろうからひとまとめに取り扱うべきというのと、大株主が親族に細かく株を分配することで不当に低い株価評価とするのを防ぐという趣旨です。
(図1)
今回のケースの場合、幹部に渡す株式は3~5%くらいを想定しているので、フローチャートの一番下の「非同族株主グループ」というところになるのですね。その場合、「経営関与なし」で「配当還元法」という計算方法となるのですか。
はい、非上場株式の「保有価値」は、
(1)一定割合以上の株式を保有する事で経営に関与する価値
(2)株を保有する事で配当をもらえる価値
この2つとなりますので、持株比率が低い少数株主ですと(2)の配当をもらう価値しかないので、株式の価値は大株主よりも低い株価になるのです。
なるほど、非上場の会社の株は一定割合以上を持たないと価値が低いという計算になるのですね。この「配当還元法」はどのように株の価格を算定するのでしょうか?
直近2期間の配当実績額の平均額を、将来10年間受け取られるものとして株価を算定します。
配当をもらう価値は会社がどんな事業・業種であっても関係ないので全ての会社で同じ計算式となります。配当も年によって違ったり、将来何年間配当がもらえるかも会社ごとに違うかもしれませんが、一律に上記の計算式で株価を算定します。
ちなみにウチの会社では配当なんて出していないので平均配当額は0円、そうすると株価は0円になりますか?
さすがにそういうわけにはいかなくて、
配当が株式の発行価格の5%未満の場合は配当率5%として計算します。
御社の場合は1株10,000円で発行しているので、[1株500円の配当×10=5,000円]というのが配当還元法での株価算定となります。
株価算定ってだいぶ複雑ってイメージでしたが、こんな簡単なんですね。配当のない会社だと発行金額の50%になるということですね。
図1の経営関与ありの場合の「原則的評価法」になるとちゃんと専門家に算定してもらったほうがよいですね。
わかりました。あと気になったのが、ウチの会社って増収増益でもっと高い株価になるんじゃないかと思ったのですが、「配当還元法」だと利益の金額は計算に含まれないのですね。
「配当還元法」の場合はあくまでも配当をもらえる価値なので、会社がいくら利益を出していても配当がないのであれば価値はない。という考え方になるのです。
なるほど、クリアになりました。ありがとうございます!
あと、開業から3年未満の会社の場合ですと配当還元法ではなく、1株当たりの純資産価額による評価となりますので株式評価方法の違いにはご注意ください。
LINEも近々?ベンチャーの夢、上場!創業株式を従業員に譲渡する場合の注意点!
https://bizer.jp/archives/1607
(本文抜粋)贈与税の計算では、開業後3年未満の会社等の株式の評価は財産評価基本通達189-4にて、基本的には「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。」とされています。
土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価
以上が、少数株主へ自社株を譲渡する際の、株価算定方法となります。
実際に必要な手続きに関しては、Bizerの「ToDoリスト」機能の「株式(未公開株)を無償譲渡する」を見て、無償譲渡の契約書や株主総会議事録、その他必要な書類を確認してみてくださいね。
※「ToDoリスト」ー「 株式(未公開株)を無償譲渡する」