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厚生年金保険料率の改定があるぞ!9月は給与計算誤りに気をつけろ!

9月に厚生年金保険料が改定されるってご存知でしたか?厚生年金保険料は社会保険料の一種です。
社会保険料(厚生年金保険料および健康保険料)は、「標準報酬月額×保険料率」の式で計算されます。
全国健康保険協会のサイトにて、保険料額表が提供されていますのでそちらの表に照らし合わせることで保険料を算出できます。

標準報酬月額」とは、実際に支払われる給与に対し、国が定めた一定のレンジ毎に区切ったもので、たとえば、総支給額が198,000円の場合、以下の料金表に照らし合わせると標準報酬月額は200,000円になります。
また、標準報酬月額200,000円に対する厚生年金保険料を見ていくと、全額が36,600円で、折半額が18,300円であることがわかります。
(厚生年金保険料は会社と被保険者で折半して負担します)

さて、この厚生年金保険料の計算において、9月から10月にかけてはいくつかの変化点があり、注意が必要な期間となっています。
注意点を具体的に、以下列挙していきたいと思います。

1.9月分から厚生年金の保険料率がアップする

平成29年8月分までの厚生年金保険料率は標準報酬月額の18.182%でした。
実はこの厚生年金保険料、毎年9月に少しずつ保険料率がアップしているのです。
ただし、厚生年金保険料率の引上げは今回の改定をもって終了となり、以降は18.3%で固定されます。​

平成29年9月分からの厚生年金保険料率は「18.3%」となります。

参考:厚生年金保険料率の引上げが終了します​

給与計算においては、本人の給与から控除する保険料額が変わりますので、新しい保険料率に合わせた保険料を控除しなければなりません
保険料率の更新が漏れて、古い保険料率のまま計算してしまうというミスをしないよう気を付けて下さい。

2.9月分から標準報酬月額が変化する人がいる

6月中旬から下旬にかけて、年金事務所から封筒が届き、その中に「算定基礎届」という用紙が入っていたと思います。その用紙に、4月、5月、6月の給与額等を記入して、会社を管轄する年金事務所に提出したことを覚えていますか。

7月1日〜10日中に申請【算定基礎届】をお忘れなく!

この「算定基礎届」に記載された直近の給与額をもとに、年金事務所のほうで新しい標準報酬月額を決定し、会社宛に「標準報酬決定通知書」という通知書が郵送されます。

期限までに算定基礎届を提出済みの場合は、既に「標準報酬決定通知書」はお手元に届いていると思います。

この「標準報酬決定通知書」には、社会保険に加入している社員それぞれの平成29年9月からの新しい標準報酬月額が書かれており、今後1年間この標準報酬月額が適用されることになります。(ただし、一定以上の昇給等があって随時改定の要件に該当した場合は、年度の途中で標準報酬月額が変更となる場合がある。)

そのため、給与計算においても、新しい標準報酬月額に基づいて、社会保険料を計算し直さなければなりません。健康保険は標準報酬月額が変わるだけですが、1.でお伝えした厚生年金のほうは標準報酬月額と保険料率の両方が変わりますのでとくに気を付けて下さい。

日本年金機構:平成29年9月分(10月納付分)の健康保険・厚生年金保険の保険料額表
※都道府県毎に異なる

3.源泉所得税も変化する場合がある

給与計算においては、源泉所得税も天引きをしますが、源泉所得税を計算するときの課税所得は、額面から社会保険料を控除した額を用いますので、社会保険料の控除額が変わると、それに連動して源泉所得税の額も変わる場合があります

厚生年金の保険料率が変化することに伴い、9月分から全社員の社会保険料額が変化しますので、源泉所得税についても「税額表」に当てはめて、全員分の天引き額を再チェックする必要があります

4.どのタイミングから新しい保険料率や標準報酬月額を用いるか

先ほどから、「9月分の保険料から」保険料率や標準報酬月額が変更になると説明をしてきましたが、9月に支給する給与から変更をかければ必ずしも正解とは限らない、ということに注意が必要です。

毎月の給与から控除している社会保険料は、「何月に支給される給与では、何月分の保険料を控除しているのか」ということを確認した上で、変更のタイミングを決める必要があるのです。

当月控除(9月に支給される給与から天引きされるのは9月分の社会保険料)の場合は、9月支給分の給与計算から新しい保険料率や標準報酬月額を用います。

翌月控除(9月に支給される給与から天引きされるのは8月分の社会保険料)の場合は、10月支給分の給与計算から新しい保険料率や標準報酬月額が変更となりますので、慌てて9月分の給与計算から保険料率や標準報酬月額を変更してしまうミスをしないようにして下さい。

最後に

以上4点が主な注意すべきポイントですが、万一間違えてしまった場合は、翌月以降の給与計算や年末調整で調整するなどの対応が必要となってきます。また、給与計算のミスは、社員の会社に対する不信にもつながりかねませんので、細心の注意を払って作業するようにして下さい。

なお、給与計算ソフトを用いれば、多くの部分はソフトが計算してくれますし、とくに給与計算freeeのようなクラウド型のソフトであれば保険料率の変更なども自動で対応してくれますので、給与計算に自信がない場合は、力ずくでエクセルなどで計算しようとせず、この機会に給与計算ソフトの導入を検討してみてください。あるいは、専門家にアウトソーシングしてしまうのが良いのではないかと思います。

榊 裕葵

ポライト社会保険労務士法人 社会保険労務士。上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務後、社会保険労務士として独立。勤務時代、常に経営者の側で仕事をしてきた経験も活かしながら、スタートアップ企業の労務管理体制の構築や、助成金申請の支援を積極的に行っている。