【後編】「多様化する仕事の価値観の中で、なぜ税金だけ変わらないのか」NPO法人全日本保険FP協会副理事長・奥田氏が語る、税に縛られない経営


【前編】「自分に万が一のことがあった時に、果たして会社はどうなるのか」NPO法人全日本保険FP協会副理事・奥田氏が語る、ベンチャー経営と保険

 

多くの中小・ベンチャー企業経営者にとって、近いようで遠い「保険」と「税金」。

 

保険は馴染みなく、逆に税金に対しては節税の意識こそ強いものの、知識不足からその本質を見誤っているケースも少なくない。

 

今回は、NPO法人全日本保険FP協会で副理事長を務める奥田氏にインタビューを行い、前編では保険について、後編では税金についてそれぞれお話を伺った。

 

多様化する価値観の中で、経営者にとっての「保険」と「税金」の在り方について、改めて考えていく。

 

 

節税の際に重要な「浪費」「消費」「投資」の違い

 

 

—前編では主に保険について話して頂きました。後編は税金について伺いたいんですが、ベンチャー経営者で、とにかく税金を払いたくないっていう人は多いですよね。

 

否定はしないんですけど、税金を払いたくないとなると、お金を使うか隠すかのどちらかです。隠したら脱税という犯罪になるので使うわけですよね。

 

でもそうすると、いざお金を使いたいという時にお金がない、入ってくる予定のお金が入ってこなかったというのは、資金繰りの計画上、非常に怖い。そういう非常事態を考えると、多少なりとは手元にお金を残しておく必要がある。お金を残すためのコストとして、多少の税金は必要ですよね。

 

ただこのコストが適正かどうか、例えば法人で莫大な利益をあげて、納税しろと言っているのではなくて、個人法人で分けるとか、ある程度の規模になってきたら関連会社を作って売上を分けるとか、いくつか合法的なやり方があると思うんです。

 

隠さずに全部表に出して、納税して、その上で自由に使えるお金を最大化するためにどうすべきかを、考えるべきだと思います。

 

—関連会社となると少しレベルが高くなってきますが、例えば3人くらいのベンチャーで月商200万円、年商2000万円から5000万円のレンジって結構多いと思います。この辺りの会社ってどうですか?黒字ではあると思うんですけど。

 

次のステージに行こうと考えている人は、ちゃんとやっていると思います。けど3人くらいでこの額を稼ぐと、結構リッチな生活を送っていると思うんですよね。そういう人たちは、結構あやふやじゃないでしょうか。自分がそうだったのでよく分かるんですけど。笑

 

そういう時ってどうするのかというと、税金を払いたくないから、所得税を抑えるために役員報酬を抑えるわけです。法人にお金を残して、そして個人法人一体で使っていって利益を抑えていく。そうすると個人の所得税も少ない、法人の法人税も少ない、税金少ないラッキー!となる。

 

—経費で暮らしていくんですね。

 

しかしこれをやりすぎるとお金が残らないというのと、あと社会的信用も無くなります。クレジットカードが作れないとか、住宅ローンが組めないとか。

 

—会社に利益もないし、個人所得も低いですもんね。

 

例えば家を買いたいと思った時にも、お金が手元にないから買えない。

 

—時代背景的にも、これから先どうなるかわからないですからね。年商5000万円が20年続く保証はどこにもない。

 

そうですよね。そう考えると、貯金しろというわけではないんですけど、自分の人生設計の中で「とはいえなんとかなるよ」と思っている部分の中で、生活レベルを落としてでもそれを許せるのかどうか、というのはあると思うんです。

 

—これは難しいですね・・・。

 

あとは使うお金についても考えなくてはなりません。よく言われることとして、法人で使うお金には「浪費」「消費」「投資」の3種類があって、基本的には投資に向かわなければならない。使ったお金が将来リターンを生むものですね。

 

—浪費と消費って違うんですか?

 

消費は本当に必要なもの、文房具とか消耗品とか携帯とか。浪費は無駄なものです。

 

決算の前に使うお金が、投資であれば良いんですよ。先々利益を生むようなものであれば、お金を使って利益を圧縮すればいい。

 

だけどそれって、なかなか難しいですよね。使うお金が浪費になるくらいなら、税金を納めてお金を残しておけばいいんじゃないか、ということです。

 

—その考え方は分かりやすいですね。

 

 

中期的な人生設計で考える、お金を残すことの重要性

 

 

法人の税引き後の利益については「未来費用」という話もあります。

 

法人で売上が上がって、税金を納めますよね、税引き後利益が残りますよね。理論上このお金っていうのは、税金を払った後のお金なので、自由に使えるお金なんですね。

 

でも税金を納める前だったら、これを経費にならないものに使ってしまうと税金を払わなければいけないので、自由に使えない。

 

税引き後の利益は、未来に自由に使って良い費用、なので未来費用と呼んでいます。

 

この縛りのないお金をいくら用意できるかという考え方で、M&Aだとか、ビジネスモデルを買収するだとか、何かのときに調達せずに使えるお金があればそれに超したことはないですよね。

 

もちろん調達してもいいですけど、調達できなければチャンスを逃してしまうわけで。

 

—なるほど。税引き後の利益って、どのくらいのステージで考えた方が良いんですか。

 

事業を始めた時に考えてほしいテーマではありますね。リアルにイメージできていればの話ですが。

 

スタートアップでも、利益を出してお金を残すというのは意識してほしいです。

 

—でも今、資本金300万くらいでやっている同世代の経営者たちを思い浮かべても、皆さんお金残してないですね。よくあるのは受託開発とかコンサルですけど、全然残していなくて。彼らの経営って、何かあったら潰れて解散だなっていう前提がある気はしますよね。

 

「潰れたら潰れたでいいよ、また自分でやるし」という人だったら、良いと思いますね。ご自由にどうぞという感じです。

 

—今を生きている感じですね。

 

ただ年齢であったり、家庭があったり、子供ができたりしたら、そのままのスタイルでいけるのかという問題も出てくると思います。

 

—なるほど。もう少し中期的な人生設計をした時に、今の会社を1,2年後どうなるか分からない会社ではなくて、なるべく10年先まで考えて、ちゃんと何かあった時の会社のキャッシュも持っておかなければならないと。

 

あとは将来何かをしようと思った時に、お金を借りますよね。その借りた時の金利のコストって、先に利益を上げて貯めておけば削減できますよね。

 

資金効率をさらに高めていこうと思ったら、自分のお金でやれば一番効率が良い。

 

—そうですね、まともなお話ですね。今って気軽に起業ができるがゆえに、継続性に対する覚悟はだいぶ弱くなっていると思います。

 

それも良いことだとは思いますけどね。またチャレンジすれば良いという。

 

—それこそ首つるようなことはないっていう。

 

そうですね。でも経営者の価値観もあるとは思います。今を生きて、何もお金を残さなくていいという人なら良いですけど、社員や家族のために何かをしてあげたいのであれば、先のことは考えた方が良いですよねっていう。

 

その価値観も多様化してきているので、これが正解と言うものはないんですけどね。

 

—昔少なかったであろう考え方が増えてきているんでしょうね。とりあえずやっちゃえみたいな。

 

確かに我々からすると、利益を出して税金納めてお金を貯めておいたら、安心だろうと思っていました。少なくとも固定費1年分くらいのキャッシュがあれば、安心だろうと。

 

でもこれは昔の発想で、今はダメならダメで別に良い。この国にいれば食うには困らないし、という考え方ですね。

 

 

意思決定の軸が税金、というのは本末転倒

 

 

—一方で今は競合が出てくるスピード感がすごいので、1年のキャッシュを残しておいてというよりは、突っ込んで加速していかないとやられてしまう。マーケットの変化が速すぎて、キャッシュがあろうがなかろうが、どっちにしろ先が見えないというのもあると思います。

 

そうですね。それで言うとお金を使うのも、税金払う払わないを除いて、先々で勝てるように投資するのもありだし、逆に先が分からないからこそ、今を最大限楽しんで使うっていうのもあり。

 

—超割り切り型ですね。笑

 

でもそこには、税金を安くするという意識はないじゃないですか。税金というところを意識すると、お金の使い方を間違うんじゃないですかね。

 

—いいですね。「あなた税金の為に生きているの?」ということですね。まずどういう生き方をしたいのかというのがあって、結果、税金がどうなるのか。

 

そうです。税金を払いたくないからお金を使うって、本末転倒でしょ。軸を、税金取られる取られないにするのはやめましょうよ、ということです。

 

—それはナンセンスですよね。税金に縛られて動くというのは、おかしな話です。

 

昔から価値観は多様化してきたのに、なぜ税金だけ変わらないのかと。それ捨てようよって。税金に関する価値観も多様化していいじゃないですか。

 

—それは「税金に関する価値観の多様化」という受け止め方が出来るほど、以前を知らないというのがあるかもしれませんね。働き方とかは多少変遷を知っているので「変えようぜ」って前のめりにいけますけど、急に税金の話が来た瞬間に、そもそも知らないので抵抗感があるんでしょうね。

 

そういうところは、マスコミもあまり言いませんからね。働き方とか、自由な生き方とかは報道しますけど。

 

お話をしていてずっと引っかかっていたんですけど、なぜベンチャー経営者は、ガンガン多様化しながら仕事をしているのに、税金のところだけ一つに固執しているのか・・・それは、財務と税金を知らないからなんですね。

 

—税理士や弁護士とかもそうかもしれませんね。分からないから言われるがまま。先輩経営者から聞いたフレーズを、そのまま使っているだけなのかもしれません。

 

昔は税率が高かったんですよ。法人税でも50%くらいのところからどんどん下がって、今は最大でも34%、年間で400万円以下の利益なら20%くらいなので、そのコストで誰からも文句を言われない自由なお金を残すことができるなら、税金払っておこうよと。

 

—赤字の会社の経営者さんからも税金の相談されたりしますからね。そのくらい知識もないし、身近じゃないし、何となく「会社は税金取られるから節税する」というフレーズだけが出回っていて。でもその中で、先ほどの生き様の話が出てきますね。

 

月1万円で保険に入るというお話がありましたけど、月1万円で保険に入るのか、ご飯を食べるのか、あなたの価値観でどっちが良いですかということですね。

 

「いや私は美味しいものが食べたいんです」という方はどうぞどうぞ、1万円で一番食べたいものを食べて満足してくださいと。

 

—例えばその1万円を、新しいプログラミング言語の学習費用にあてたいのであれば、将来莫大なリターンを生む可能性もあるので、それもあり。1円まで広告費につぎ込みたいのであれば、それもありということですね。

 

ですね。多様化している価値観の中で、ベーシックな知識を持った上で、あなたはどうしたいの?というのを考えてほしいですね。

 

そこで私たち全日本保険FP協会は、ベンチャー経営者のサポートができるアドバイザー、もっと言うと友だちになりたいんです。友だちなら親身にアドバイスできるじゃないですか。そういう立ち位置になりたいですね。

 

—良い気づきになりました。ありがとうございました。

 

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【前編】「自分に万が一のことがあった時に、果たして会社はどうなるのか」NPO法人全日本保険FP協会副理事・奥田氏が語る、ベンチャー経営と保険