税務署で長く実務に携わり、2016年に鹿児島市で開業された西田友博税理士事務所は、クラウドを活用した税務ソリューションを展開し順調に業績を拡大されています。
今回は、2019年4月にBizer teamを導入し、現在も積極的にIT化を推進する西田友博さんと、担当スタッフとして活躍する山田拓哉さんにインタビュー。士業事務所ならではのビジネスの課題や、導入の背景をお伺いしました。
オーダーメイドのビジネスだからこそ「脱・属人化」が求められる
――Bizer team以外にも、クラウドを活用するなど積極的にIT化を推進されています。その背景を教えていただけますか?
西田さん:
従来の税理士事務所は、担当者が毎月お客様と面談して、前月の報告と当月の請求書や領収書などの書類を受け取り、記帳や決算業務を行うことが一般的でした。ただ、お客様によっては書類をコピーして準備するなど税理士事務所への書類提供自体が負担になるケースもあります。一方で、事務所としても、お客様から書類をいただかないと業務ができません。
こうした課題に対して、クラウドを活用することで「お客様の負担」と「業務が後ろに詰まる悪循環」を同時に解消できます。また、オンライン面談にすることで、移動時間も削減できます。もちろん、従来のやり方を否定しているわけではありませんが、効率化を図ることで、税理士のコア業務である「経営分析」や「節税アドバイス」に注力したいという思いから、ITを積極的に導入しています。
――では、具体的な業務内容とBizer teamの導入経緯を教えてください。
西田さん:
2016年9月末に開業し、現在は社員2名とパートスタッフ2名が在籍しています。一般的に、税理士事務所はお客様との顧問契約で成り立っており、月次で経理書類を受け取って会計ソフトに記帳し、決算を行うのが基本業務となります。お客様も商店から企業まで業種や規模が多様で、決算期の違いだけでなく、仕訳や区分など日々の経理処理もそれぞれ異なるため、いわばオーダーメイドの対応が求められる点が特徴です。
ただし、オーダーメイドのビジネスであるからこそ、業務が属人化する傾向があります。お客様が少ないうちは問題ないのですが、私に情報が集中している状態では、すぐに限界が訪れます。スタッフを増やして業務を分担しようにも、お客様とのやり取りや業務を担当スタッフに委ねすぎてしまうと、税理士として財務内容を把握できなくなってしまいます。お客様の数字を仕上げるのは担当スタッフ、経営分析や節税アドバイスを行うのは税理士と、本来の役割を明確にしながら属人化を解消するために、業務の“見える化”が重要だと感じていました。
また、経理の締めは毎月決まったタイミングで訪れます。経営者として、退職だけでなく介護や産休など、万が一担当スタッフが抜けたとしても、滞りなく業務が回るような体制を整えたいという「リスク回避」の意図もあります。ビジネスを拡大していくのであれば、タスク管理にもITによる共有化が必要だと感じたのが、Bizer team導入のきっかけですね。
山田さん:
当初はチャットツールでやり取りしていたのですが、お客様が増えて分業化する中で、個別管理が難しくなっているのを感じていました。過去を振り返りたい時に、お客様名で履歴を検索しないと分からないのがまず面倒。そして、西田さんとのやり取りは「〇〇様の月次決算を〇日までに」など、チャットツールでのやり取りでも成立しますが、パートさんへの指示はそうはいきません。具体的なデータの提示と入力方法、イレギュラー事項の取り扱いなどを細かく指示する必要があります。
また、自分だけで作業が完結していた頃は、遅延している作業があったとしても自力で挽回できましたが、分業化すると何がどこまで進んでいるかを都度把握しておかなくてはなりません。そのため導入前は、細かいタスク管理はチャットツールではなく、口頭でパートさんに進捗を確認しながら作業していたので、とても非効率だったと思います。
スタッフに丸投げせず、導入時は50ものテンプレートを自分で作成
――導入にあたり、苦労した点はありますか?
西田さん:
Bizer teamを導入する前に、外資系のタスク管理ツールを入れたのですが、なかなかうまくいきませんでした。Bizer teamは国産の安心感もありましたし、セミナーで説明を受けて「これだ!」と感じたので、導入初期はスタッフに丸投げせずに、私自身が集中してタスクを作成したのが良かったのかもしれません。開業してまだ3年ということもあり、お客様のことを一番良く知っているのは自分です。導入する覚悟を決めて、自分の頭の中を整理・分解し、可視化する必要がありました。
自分の業務を分解した結果、「お客様から書類を預かる」タスクから始まり、「会計ソフトへの入力」「月次決算」などを経て「確定数字の報告」まで、約50ものタスクになりました。お客様ごとに必要なタスクは異なるので、50のタスクのテンプレートを作成した上で、担当スタッフにお客様単位でタスクを選択してもらいました。また、社員とパートさんの役割分担もここで区分しています。
タスク管理が一定の形になってから3カ月程度経ちますが、スムーズに導入できていると思います。現在は、仕事の依頼はチェックリストでタスクを作っています。チャットツールと異なり、Bizer teamを使えば「いつまでに・何をしてほしいのか」が具体的になりますし、ピンポイントでスタッフにタスクをアサインすることができます。みんなに知ってほしいことはチャットツール、タスクの依頼はBizer teamと、自然に使い分けをするようになりました。
山田さん:
私もパートさんへの業務依頼はBizer teamを通じて行っています。ルーティンの月次タスク以外にも、新規でまだ業務が固まっていないお客様や、スポットの案件もまずタスクに追加することで、忘れないようにしています。
IT化によって、ビジネス拡大が実現できる体制へ
――導入の成果はいかがでしたか?
山田さん:
ホーム画面に自分のタスクとチェックリストが出てくるので、やることが明確になったと思います。パートさんからの「何をすればいいんですか?」という会話がかなり減りましたし、業務が終われば完了報告がコメントで届きます。こちらもタスクを見れば進捗が把握できるので、スケジュール通りに進んでいるかが分かります。タスクを共通化していれば、翌月も処理の方法がすぐに分かりますし、独特な仕訳をするお客様は自分が行い、それ以外をパートさんに任せるなど、分業も滞りなく進むようになりました。
消費税の課税区分など、入力の際に注意が必要な項目は、これまでは口頭でパートさんに補足説明していましたが、お客様ごとに対応が異なるので、タスクのメモ欄に記載するようにしました。極端な話をすると、担当者の僕がいなくても、メモを見ればある程度業務ができる状態になっていると思います。
西田さん:
会話は減っているかもしれませんが、Bizer teamを通じて意思疎通が図られているので、担当スタッフとパートさんの関係性はスムーズになった気がします。また、タスクに期限がついているので、業務の優先順位が可視化されたのも大きいですね。期限を過ぎているのは「お客様から資料をいただけていない」のか、それとも「社内の作業が遅延している」のか、遅延要因を可視化することもできました。
なによりも、IT化によってビジネスが拡大できる体制になったという面がとても大きいですね。環境も整いましたし業務自体も増えているので、スタッフを増員する予定です。
「言わずとも、共有しながら働く」ことが理想
――今後、どんなチームにしていきたいですか?
山田さん:
IT化はどの業種でも求められていると思います。税理士業務にもITによる効率化や共有化が必要だと感じていて、事務所の方針に共感して働いているのですが、今はあるべき方向に順調に進んでいると思っています。
西田さん:
開業当初は私が全てのお客様を担当していましたが、スタッフが増え続ける中で、チームでできるだけ業務を共有してほしいと願っていました。今、スムーズに共有を図ることができているのは、Bizer teamのおかげだと実感しています。チームのメンバーが、言わずとも共有しながら、同じ目的に向かって近づいているのが理想の姿ですね。