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経営者の持ち株数と共同創業者間トラブルについてAZX弁護士に聞いてみた

こんにちは。

今回は、創業者が持っておくべき株式数と、創業株主間のトラブルをテーマにAZX弁護士さんにお話を伺いました。

外部から出資を受けたりする際は株を譲渡することになります。そんなとき、そもそも経営者としてどれぐらい株を持っていれば安全なのか、気になりますよね。

また、仲の良い人同士で会社を設立するということもよくありますが、このような共同創業者同士が、のちのちトラブルになってどちらかが抜けるという話も意外とよく聞くものです。

こんなとき、どういったことに気をつければいいのか、AZX弁護士さんに疑問をぶつけてみました。

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—というわけでAZX総合法律事務所の菅原さん、本日はよろしくお願いします。
「はい、よろしくお願いします」

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①株の安全な持ち分
—今日は株の持ち分とか共同創業者間のトラブルについて聞きたいです。ですがその前に、そもそも創業者は株をどれくらい持っていれば安全なのかとかも教えてもらえますか? 外部から出資を受ける場合など、株をどれくらい渡していいのかとか気になると思うので。

「はい、わかりました。何をもって「安全」というかは難しいですが、ざっくり過半数である51%以上は持っていてほしいですね。決議事項の大半は過半数の賛成で決まりますから、出資者の方との間で出資者の方に拒否権を与えるような特別な契約を結んでいない限りは半分持っていればあまりトラブルにはならないでしょうね」

—よく三分の二がひとつの基準というのも聞く気がするんですが、それはどういったものになるんでしょうか?

「特別決議といって、特定の決議に関しては三分の二以上の賛成が必要になります。例えば株式の発行ですとかストックオプションの発行とかは特別決議が必要ですね」
—ストックオプションの発行ってよくやってるイメージがありますけど、三分の二持ってなくて大丈夫ですかね?
「特別決議は重要な事項を決めるときのものなので、そういう意味では大事ですが、ストックオプションも優秀な人材の採用のためなどきちんとした意味のあるもので、数も10%以内程度であれば、反対されることはあまりないんじゃないでしょうか」

—なるほど、たしかにストックオプションを出せなくて有望な人材を失うのは株主としても困りますもんね。
「あとは株を半分持っていることで、三分の二の賛成が必要な議案を否決できるというのも大事なポイントですね」

—半分持っていれば私が社長をはずされることもなさそうですね!
「他にも特別決議より厳格な要件の特殊決議っていうのがあって、少し細かい話にはなるのですが、議決権を行使可能な株主の半数以上と、議決権を行使可能な株主の議決権の三分の二以上に当たる多数により……」

あ、そういう難しいのはいいです。

「……」

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—というわけで株は半分持ってればいいということですよね?
「ざっくりな理解ですね……。気をつけてほしいのは、最初から半分しか持ってない状態というのは避けた方がいいです。資金調達は何回か行うことも多いですし、その度に株を譲渡するわけですから、調達ラウンドを考えた資本政策を行ってください」

—はい、勉強になりました!

②創業者間のトラブル
—で、次の相談なんですが、もともと仲の良かった人同士で創業したのが、数年経つと仲が悪くなってしまうという、よく聞くやつです(笑)
「ほんと、よく聞きますね(笑)」

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—具体的な事例で教えていただけると助かります。

「例えば2人で起業して、1人が社長で、1人がエンジニアみたいな場合がよくあります。社長は社員や株主の利益を考えて、時としてサービスを中止してピポッドしたり、やりたくない受託開発をやらなければと考えるときもあります。それに対してエンジニアは、これまで作ってきたサービスを続けたい!となって、事業の方向性にズレが生じてしまうことはありますね。あとは、自分が期待したほど働いてくれない!とか、パフォーマンスが悪くて一緒にやっていけない!いうのもよく聞きます」
—なるほど、ありそうですね……
「普通の従業員ならやめてしまえばその後音信不通でもいいですが、株を持っている役員だとそうもいきません。株というのはやめるからといって当然に会社に置いていくものではないので、事前に何も決めずにそういう状況になった場合はかなり面倒なことになる場合もあります」
—こういう場合、どういったことが考えられますか?
「例えば、株を持ったままライバル企業に移るとかもできちゃいますよね。ライバル企業の従業員なのに自社の株主でもあるので、財務諸表を見せてほしいとか、株主としての権利行使が出来てしまうわけです。下手すると売上とか全部筒抜けですよ」
—こわっ!それはイヤですよ!やめてください。
「あとはやめるときに株を買い取るという手もありますが、それはそれで面倒なことになります。会社としては株を置いていってほしいので、どうしてもやめる側が有利な立場になるんですよね。その結果、買い取り価格をかなりつり上げて交渉してくるわけです。その会社が魅力的であればあるほど、その傾向は強いですね。上場すれば自ずと価値は上がるわけですから」
—そういう状況を防ぐために事前に契約が必要なわけですね。
「はい、創業株主間契約といいますが、役員がやめる場合の株の取り扱いなどについて、あらかじめ決めておく契約ですね。1番のポイントは、やめたら株を置いていくことをきちんと定めることです。あとは、誰が買い取るのか、いくらで買い取るのかなど、細かいところを決めていきます」
—やはり創業株主間契約をあらかじめ結んでいた方がトラブルはないですか?
「100%トラブルがなくなるわけではないですが、日本人は結構真面目なので、明確な契約を結んでおけば契約に書いてあるのに株を渡してくれない!という紛争はあまりないように思います。逆に契約を結んでないところは、もめることが多い印象がありますね」
—なるほど。では逆に、例えば仲が悪くなったとかで役員をやめさせたいなと思ったときは、何か方法はありますか?
「先ほどの話ともつながるのですが、役員の選任・退任については、株主総会で決めることになりますので、株を51%以上持っていればやめさせることは出来ます。ただ、合理的な理由もなくやめさせた場合は、損害賠償を請求されたりということは考えられます
—任期の問題とかも考えられますよね?
「そうですね。なので、もし役員をやめさせたいと思ったら、まずは任期を確認してください。任期の残りが短いようでしたら、任期満了時に再任しないことでやめさせることはできます。ちょっと生々しい話ですね(笑)」
—(笑)。それは株主総会でそのように決議すればいいわけですね?

「はい。ただベンチャー企業の場合、任期を最長の10年に設定していることが多くて、これだとなかなかやめさせられないんですよね。任期を10年にしていると、上場を目指している会社の場合には投資家からもっと短くするよう求められることも多いですので、2年ぐらいで設定されることをおすすめします

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—任期満了を待つ以外でやめさせられる方法はないんですか?
「強制的にやめさせる方法としては、解任するという手段があります。ただ、解任だと先ほど言ったように損害賠償請求されるおそれがありますし、解任したことが登記簿謄本に載ってしまいます
—え!?クビにしたことがわかってしまうってことですか?
「はい、解任は登記事項なので載ってしまいますね。そして、やはり会社としてもイメージは良くないです。解任された方だって、再就職に支障が出るかもしれないですよね」
—たしかに!問題児としか思えないですね(笑)
「ですのでこの場合は、話し合いの上、自らやめてもらう辞任の形を取ってもらうのがお互いにいいですね」

—なるほど、辞任ですか。役員の場合は、株主次第で進退が決まってしまう部分もありそうですね。

「はい、そういう意味では、単なる従業員よりも辞めてもらいやすいという側面はあるかもしれませんね。従業員は株主がやめさせられるわけではないですから」
—会社としては任期を短く設定しておけばコーポレートガバナンス的にも見栄えがいいし、何かあったときは、措置がとりやすいということがあるわけですね。すごい勉強になりました!

今回のポイント

①株の安全な持ち分
・創業者は51%以上は株を持っておこう
・最初から51%ではなく、その後の資金調達を考えた資本政策を練ろう
②創業者間のトラブル
・あらかじめ創業株主間契約を結ぼう
・解任は最後の手段!役員を辞めてもらう場合は、辞任してもらうか任期満了での退任が望ましい

※創業株主間契約についてはAZX Professionals Groupのブログに詳しく掲載されています。

菅原 稔

AZX Professionals Group弁護士。AZXではベンチャー企業側とVC側の両面のサポートを行い、契約書や利用規約等の作成、ビジネスモデルの適法性審査、資金調達、ファンド組成など、ベンチャー関連法務に広く携わる。日々の業務の傍ら、若手起業家やキャピタリスト向けのセミナー等も実施。