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賞与(ボーナス)にかかる社会保険料、どうやって計算されてるの?

12月は賞与(ボーナス)の時期ですね。
サラリーマンにとって嬉しいボーナスですが、このボーナスにも社会保険料がかかります。
毎月の給料には一定の料率で保険料がかかるのはなんとなく分かるけど、賞与にかかる社会保険料ってどうやって計算されてるんだろう?
給与明細をみてふとそう思った皆様の疑問に、社会保険労務士さんが回答します。

賞与に対する社会保険料は「標準賞与額×保険料率」で計算する

賞与に対する社会保険料は、賞与の支給額から計算される「標準賞与額」に社会保険の料率を掛けて計算をします。
「標準賞与額」の算出方法や、社会保険料の料率については実務のポイントをまとめてご紹介します。

「標準賞与額」の原則

「標準賞与額」は原則として、賞与の支給総額から千円未満を切り捨てた値となります。
例えば、賞与の支給総額が9,999円の社員の標準賞与額は9千円となり、9千円に対して健康保険料と厚生年金保険料がかかります。
なお、千円未満の端数を切り捨てる「標準賞与額」の考え方は、雇用保険料の計算には用いません。
賞与に係る「雇用保険料」の計算においては、千円未満の値を含めた賞与額に対して雇用保険料率を掛けます。

「標準賞与額」の例外

「標準賞与額」には、健康保険と厚生年金にそれぞれ上限が定められています。
一定の上限を超える「標準賞与額」に対しては、健康保険料、厚生年金保険料はかかりません。
ただし、健康保険、厚生年金、それぞれの上限額の集計期間と上限額が異なることに注意が必要です。

健康保険の上限は「年度の累計で573万円」

健康保険の「標準賞与額」は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年度内の累計額573万円が上限となっています。
標準賞与額の上限は、賞与の支払を受ける個人単位で計算します。

例えば、4月に500万円、同じ年の10月に500万円の賞与がそれぞれ支払われたとします。
この場合、4月の賞与に係る健康保険料は500万円に対しかかりますが、その時点で上限まであと73万円となりますので、10月の賞与に係る健康保険料は73万円に対してかかることとなります。

一方、同じ年の3月と4月に、それぞれ500万円の賞与が支払われたとします。
この場合、3月と4月は異なる年度をまたぎますので、3月、4月の賞与に係る健康保険料は、いずれも500万円に対してかかります。

同じ1年間の賞与でも、年度をまたぐかどうかで社会保険料が大きく異なる可能性があります。

厚生年金の上限は「1ヶ月あたり150万円」

厚生年金の「標準賞与額」は、1ヵ月あたり150万円が上限となっています。
前述の例と同様に、4月に500万円、同じ年の10月に500万円の賞与がそれぞれ支払われたとします。
賞与にかかる厚生年金保険料は、4月、10月、いずれも150万円に対してかかります。

あまり無いケースかもしれませんが、同じ人に同じ月に賞与が2回支払われる場合は、2回の賞与の合計額が150万円に達するまで厚生年金保険料がかかります。
厚生年金の上限は「1支給あたり150万円」ではなく、「1ヶ月あたり150万円」と正しく覚えておきましょう。

退職者に賞与を支払う時

退職者に賞与を支払う場合など、健康保険と厚生年金の「被保険者資格喪失日が属する月」に支払われた賞与に対しては、健康保険と厚生年金いずれの保険料もかかりません。

退職により健康保険と厚生年金の被保険者資格を喪失する場合の、「被保険者資格喪失日」は退職日の翌日です。
つまり、退職日が月末の人は、翌月の1日が「被保険者資格喪失日」となります。
よって月末退職の場合は、退職月に賞与が支払われた場合には健康保険と厚生年金の保険料の徴収対象となり、退職月の翌月に賞与が支払われた場合には健康保険と厚生年金の保険料の徴収対象外となります。

実務上気を付けるべきことは、賞与の支給月の途中で退職する社員がいないかを確認することです。
例えば、12月15日に退職する社員に対し、12月25日に賞与を支給する場合、当該社員に対する賞与には健康保険と厚生年金の保険料はかかりません。
このパターンだと12月16日が「被保険者資格喪失日」となり、12月25日は先述の通り「被保険者資格喪失日が属する月」に支払われた賞与となるからです。

育児休業中の社員に賞与を支払う時

育児休業中の社員に賞与を支払う場合、「育児休業を開始日が属する月」から「育児休業の終了日の翌日が属する月の前月」に支払われた賞与に対しては、健康保険と厚生年金いずれの保険料もかかりません。
例えば、12月1日から育児休業を取得した社員に対し、12月25日に賞与を支給する場合、当該社員に対する賞与には健康保険と厚生年金の保険料は原則としてかかりません。

ただし、当該社員が12月31日よりも前に育児休業を終了する場合は、12月25日に支給する賞与に対して健康保険と厚生年金の保険料がかかります。
育児休業中の賞与は原則として社会保険料がかかりませんが、例外として「育児休業の終了する日の翌日の属する月と同月に支給された賞与には健康保険と厚生年金の保険料がかかる」と覚えておきましょう。

賞与を支払った後は「賞与支払届」の提出を忘れずに

会社が健康保険と厚生年金の被保険者へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」の届出を行います。
「被保険者賞与支払届」の提出先は、協会けんぽへ加入している事業所は管轄の年金事務所、健康保険組合へ加入している事業所は管轄の年金事務所及び健康保険組合となります。

この届出内容により年金事務所や健康保険組合が保険料を決定し、会社に対して保険料の請求を行います。
「被保険者賞与支払届」には各従業員に支払った賞与の金額などを個人ごとに記載します。
また、年金事務所及び健康保険組合へ「被保険者賞与支払届」を提出する際には、「被保険者賞与支払届総括表」を合わせて提出します。
「被保険者賞与支払届総括表」には、賞与の総額や、支給対象人数などを記載します。
なお、70歳以上の従業員に賞与を支払う場合には別途、「70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」の提出が必要になる場合があります。

リンク・アクト社会保険労務士事務所

「IT×社労士」をコンセプトとした新宿西口駅前の社会保険労務士事務所です。 スタートアップ企業から数百名規模まで、人数を問わずIT企業の労務顧問を数多く経験しています。 事務所ウェブサイトは代表社労士が自ら作成しています。 是非一度ご覧ください。 https://linkact.jp/