外注費が「給与」だと税務調査で指摘された!?追徴課税されないために知っておくべき外注費と給与の違い。
税務調査でもよく問題となる外注費。
例えば、急に人手のいるイベントスタッフのような仕事の依頼や、単発の仕事を知り合いに頼むとき、フリーランスの方に社内に常駐勤務してもらい仕事を依頼した場合など、外注費で処理している方も多いかと思います。
「外注費」として処理していたものが、税務調査で「給与」と認定され、消費税や源泉所得税を追加で納めなければならなくなったという話はよくあることです。
「外注費」としていたものが「給与」と税務調査で認定された場合には、消費税や源泉所得税の税金の他に、罰則として加算税や延滞税など、本来払わなくてよいものまで払わなければならなくなってしまうことも。
さらに源泉所得税については、支払った相手先から本来徴収すべき源泉所得税を返金してもらわなければならないといった非常に煩わしい手間までがかかってきます。
そういった無駄な支出や煩わしい手間を後々とらなくていいように、外注費と給与を一体どのように判断するのか、それぞれの違いなどを中心にお話ししたいと思います。
外注費と給与の税務上の違い
「外注費」と「給与」では税務上の取扱いが大きく違ってきます。
外注費とは?
外注費は「所得税の源泉徴収」の必要はありません(ただし、所得税法第204条第1項に該当する報酬・料金の支払いについては源泉徴収が必要です)。
また、外注先への支払いには消費税がかかり、その消費税は課税仕入取引として扱われるため(仕入税額控除の対象となるため)、納めるべき消費税から後に控除することができます。
※なお、消費税の控除は、消費税を本則課税で計算している場合にのみ該当します。
【参考】
国税庁:所得税法第204条第1項に該当する報酬・料金
給与とは?
給与は「所得税の源泉徴収」を必ずしなければなりません。また、給与には消費税がかからないため、消費税は不課税取引(仕入税額控除の対象外)として扱われるため、納めるべき消費税から控除することはできません。
さらには、給与を支払う相手が社会保険(※)に加入している場合、本人負担分を給与から天引きして、それに会社負担分を上乗せして、会社が納める必要があります。
※社会保険料は、会社と本人とで折半し、会社が本人負担分の保険料を給与から天引きした上で、会社負担分とまとめて納付する義務があります。
外注費と給与の違い
「外注費」と「給与」の判断基準
外注費と給与の判断基準は、基本的には以下の通りです。
- 外注費
支払う報酬が請負契約、もしくはこれに準ずる契約に基づく対価 - 給与
雇用契約もしくはこれに準ずる契約に基づく対価
請負契約を結べば外注費で処理できるのか?
請負契約を結べば外注費として処理ができるのでしょうか?
そうではありません。
契約書があれば外注費になるというものでもなく、実際には「契約内容」と「業務の実態」などの客観的な事実関係に基づいて判断します。
国税庁の通達によれば、契約書などの「契約内容」や「以下の事項(5つの判断基準)」を総合的に勘案して判定します。
5つの判断基準
外注費と給与の判断は、下記の要件に一つでも該当すればいいというものでもなく、個別の契約内容や業務実態を総合的に判断していきます。
① 作業者本人が作業ができないときなどは、他の作業員を手配することが認められるか。
例えば、作業者本人が急病などにより作業に従事できないない場合に、作業者本人が他の作業員を手配し、他の作業員が従事した作業に係る報酬も作業者本人に支払われる場合(他の作業員にかかる報酬は作業者本人が支払う)などは、外注費に該当すると判定するための要素の一つとなります。
② 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるかどうか。
作業時間に関係なく、作業内容に応じて報酬が支払われるものであれば、外注費に該当すると判定するための要素の一つとなります。逆に作業時間を指定したり、作業時間単位で報酬を計算するなど時間的な拘束をすれば、給与に該当すると判定するための要素の一つとなります。
③作業の具体的な内容について指揮監督を受けるかどうか。
作業の具体的な内容や方法を作業者本人に委ねている場合などは、外注費に該当すると判定するための要素の一つとなります。
④引き渡していない完成品が不可抗力のため滅失してしまった場合でも報酬を請求できるかどうか。
完成品の引渡しなどが報酬を支払う条件であれば、外注費に該当すると判定するための要素の一つとなります。完成品の引渡しなどが完了していなくても、時間単位で報酬を支払う条件であれば、給与に該当すると判定するための要素の一つとなります。
⑤材料や用具は作業者本人が負担しているか。
作業者本人が材料や用具等を負担していれば、外注費に該当すると判定するための要素の一つとなります。
「外注費」を「給与」と認定されないために
最低限、前述の「5つの判断基準」の内容を含んだ請負契約書を作成するのが望ましいでしょう。また、作業者にきちんと請求書を出してもらうようにして下さい。
ただし、あくまで、これらは形式的なことなので実態がどうなのか慎重に判断して処理する必要があります。判断に困ったときには、安易に外注費とするのではなく、できれば最寄りの税務署や専門家に事前に相談することをオススメします。
坂本 琢磨
税理士法人S.T.M総研 所属税理士(近畿税理士会 北支部所属 登録番号126377) 東証一部上場会社経理部、建築資材メーカー営業部を経て、2006年より税理士法人S.T.M総研に勤務。法人税や所得税の申告業務においては、製造業、建設業、商社、医療法人など様々な業種に対応し、また売上規模も年商1000万円未満から年商100億円超の規模まで幅広く対応。融資に関する銀行交渉や、企業再生コンサル、事業承継などが得意分野。