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消費税区分(「非課税取引」、「不課税取引」、「免税取引」)とは?会計ソフトで記帳ミスしやすい勘定科目の税区分とは!?

今年度から消費税の課税事業者になりました。結構、消費税の負担って大きいなと身に染みる今日この頃です。消費税が免税だったのが課税に変更になったことから、念のため会計ソフトの帳簿を税理士さんに見てもらい、消費税の納税額のシミュレーションをしてもらいました。そしたら、消費税区分の設定が誤って入力されているものが、ポロポロありますって、言われてしまいました。今まで消費税の免税事業者の時には意識していなかった消費税の税区分の記帳について勉強してみます。

相談者
設立第3期、今年の決算からいよいよ消費税の納税義務者となってしまいました。

 

【参考コラム】
消費税納付は3年目まで来ない!?本当かどうか税理士さんに聞いてみた(前編)

 

村田税理士
初めての消費税納税は、思ったよりも納税額が多くて資金繰りがキツくなる会社も多いので今から納税額のシミュレーションをしておいたほうがよいですよ。

 

相談者
確かに法人税は中間納付しているので、決算期末に一度に納税することはないですけど、消費税の納税は今回初めてだから中間納付もしていないので、どれくらいの納税額になるか心配です。

 

村田税理士
それでは現時点の帳簿を見せていただけますか?

 

会計ソフトの消費税設定で消費税課税方式(「簡易課税」「本則課税」)の確認をしよう

村田税理士
まず、会計ソフトの消費税設定の消費税課税方式を確認します。ここが正しくないと、正しいシミュレーションができないので。

 

相談者
「消費税課税方式」は「簡易課税」でOKですね。第2期のうちに「消費税簡易課税制度選択届出書」をばっちり税務署に提出しておきました。

 

【参考コラム】

売上5,000万円以下なら消費税を節税できるかも!消費税の簡易課税制度について

 

村田税理士
今年の売上はいくらぐらいですか?

 

相談者
決算の着地としては、ざっくり税込み6,000万円くらいです。

 

村田税理士
そうなると消費税の簡易課税制度は適用できません。前述の【参考コラム】のタイトルにありますように、売上5,000万円以下(税抜き)の決算でないと簡易課税制度での申告はできません。

 

相談者
なるほど、そうすると会計ソフトの「消費税課税方式」は、次のどれを選択すれば良いですか?
①本則課税(個別対応方式)

②本則課税(一括比例配分方式)

③本則課税(全額控除)

 

村田税理士
詳細な説明は割愛しますが、課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上 の場合は、「③本則課税(全額控除)」を選択することとなり、この方法が3つの中で一番納税額が少ない方法です。

 

【参考】

国税庁タックスアンサー No.6401 仕入控除税額の計算方法

 

 

相談者
納税額が少ないのであれば、それでお願いします。売上は5億円以下ですけど、「課税売上割合」って何ですか?

 

会計ソフトの記帳で各取引(仕訳)に設定する消費税の「税区分」とは?

村田税理士
売上には消費税がかかるものと、かからないものがあります。
相談者
海外への輸出売上などは、消費税がかからないんですよね?
村田税理士
はい、輸出売上のような「免税取引」や、預金の受取利息のような消費しない取引である「非課税取引」、贈与のように対価を受けとらないのは そもそも取引ではないので「不課税取引」という扱いです。

 

相談者
ちょっ、何だか似たようなワードで、違いがよく分からないのですが・・・。いちいち覚えないとダメなんですか?

 

村田税理士
多くの場合は、会計ソフトの勘定科目ごとにデフォルト(初期値)で消費税区分が設定されているため、覚える必要はありません。基本的な消費税区分の種類を確認後、間違えやすい消費税区分の事例を紹介しますね。

 

<基本的な消費税区分の種類>

①国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡・貸付、役務の提供

②預金利息の受け取りや社宅(居住用住居)の貸付などの「消費しない取引」は非課税取引

③給与の支払いや保険金の受け取り

④輸出取引は国内での消費ではないため消費税が免除される「免税取引」

⑤海外での出張旅費など

⑥輸入品は通関業者が輸入消費税を計算、通知するのが通常です。

⑦有価証券や切手の輸入など一部の例外のみ

 

<事例>ミスしやすい勘定科目の消費税区分とは!?

村田税理士
多くの会計ソフトでは、勘定科目ごとにデフォルトで消費税区分が設定されています。例えば、勘定科目「受取利息」の消費税区分には、デフォルトで「非課税」が設定されているため誤って入力することはありません。

 

相談者
1つの勘定科目で、取引によって消費税区分が異なるやつが間違えそうですね。

 

村田税理士
はい、よくある消費税区分の記帳誤りとして3つのケースをご紹介します。必要に応じて会計ソフトに補助科目を作成して消費税区分を設定しておくなど検討してみてください。

 

ケース1:居住用の賃貸マンションをオフィスとして利用している場合
村田税理士
社宅家賃の支払いだったり、居住者からの社宅賃料の天引き(雑収入)したりした取引は、居住用の賃料の取引なので「非課税取引」です。

 

相談者
はい、以前の社宅のコラムで勉強して、ちゃんと記帳しています。

 

【参考コラム】

社宅制度で節税?社宅の節税効果を検証してみる!

 

 

村田税理士
あと、物件の賃貸で注意すべきは、居住用マンションとして賃貸契約をしているマンションをオフィスとして利用している場合ですが、実態としてオフィス利用で「課税取引」に該当する場合であっても、契約上、居住用として賃貸している場合は「非課税取引」となりますので注意が必要です。

 

【参考】

消費税法基本通達

(用途変更の場合の取扱い)

6-13-8 貸付けに係る契約において住宅として貸し付けられた建物について、契約当事者間で住宅以外の用途に変更することについて契約変更した場合には、契約変更後の当該建物の貸付けは、課税資産の譲渡等に該当することとなる。

(注) 貸付けに係る契約において住宅として借り受けている建物を賃借人が賃貸人との契約変更を行わずに、当該賃借人において事業の用に供したとしても、当該建物の借受けは、当該賃借人の課税仕入れに該当しないのであるから留意する。

 

 

ケース2:海外出張の経費
村田税理士
こないだの海外出張の経費はちゃんと記帳できていますか?

 

相談者
はい、海外出張のために支給される旅費や日当などは原則として課税されないため、海外でのホテル代とかタクシー代は「不課税取引」で記帳しています。

 

村田税理士
飛行機代はどうですか?

 

相談者
日本の旅行業者で購入したので「課税取引」で記帳しています。
村田税理士
そこは「免税取引」にする必要があります。国内外にわたっての輸送は「免税取引」となります。

 

【参考】

消費税法

(輸出免税等)

七条   事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。

一   本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け

二   外国貨物の譲渡又は貸付け(前号に掲げる資産の譲渡又は貸付けに該当するもの及び輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律 (昭和三十年法律第三十七号)第八条第一項第三号 (公売又は売却等の場合における内国消費税の徴収)に掲げる場合に該当することとなった外国貨物の譲渡を除く。)

三   国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信

四   専ら前号に規定する輸送の用に供される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるもの

五   前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの

 

 

相談者
なるほど、確かに国際線の空港の中は免税店だから免税っていうふうに覚えておきます。

 

ケース3:支払請求書の中に「課税取引」と「免税取引」が混在している場合
村田税理士
この通信費の仕訳、消費税の金額が8%にならないですね。

 

相談者
ああ、この請求書、明細の中に消費税がかかるものとかからないものがあって、なので記帳する時に「課税仕入」で記帳して、直接消費税の金額を修正して入力しているんです。

 

村田税理士
その入力方法ですと、消費税申告書の作成にて集計を間違えてしまいます。

 

相談者
え?ちゃんと請求書に記載されている消費税の金額で記帳していますよ。

 

村田税理士
会計ソフトの消費税申告書作成の機能では、「課税取引」や「免税取引」などの消費税区分ごとに取引金額を集計し、それに8%を掛けるような計算方法で金額が算出されます。請求書の中に「課税取引」と「免税取引」が混在している場合は、それぞれの取引を行で分けて記帳するようにしてください。

 

 

 

 

消費税の納付税額のシミュレーション

村田税理士
記帳も整理されて、課税売上割合が95%以上ということも確認できたので、会計ソフトの「消費税課税方式」を「③本則課税(全額控除)」に設定して、消費税のシミュレーションをしてみましょう。

 

相談者
会計ソフトのどの数字を見ればよいですか?

 

村田税理士
ざっくり、貸借対照表の「仮受消費税等」-「仮払消費税等」の金額が消費税の納税額になります。

 

相談者
思ったよりも消費税の納税って大きいんですね。利益の8%くらいかなと思ってましたが・・・。

 

村田税理士
経費の中で割合の大きい人件費は「不課税取引」なので、消費税の控除にならないですからね。

 

相談者
納得しました。消費税の納税額の概算が分かりましたので資金繰りを考えていきます。

村田 光平

公認会計士、税理士 、行政書士 、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央青山監査法人、2007年に京都監査法人東京事務所を経て、2013年より税理士事務所を開業。年間50社の会社設立手続を行い、法務・税務の両面からサポートを行うスタートアップ企業のエキスパート。