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企業版ふるさと納税とは?

「企業版ふるさと納税とは?」

年末になると何かと話題になる「ふるさと納税」。個人で行うふるさと納税は、税額控除や返戻品(へんれいひん:ふるさと納税でもらえる特産品など)のメリットが大きく、すでに活用されている方も多いはず。平成28年度の税制改正で、「企業版ふるさと納税」が創設されたことから、個人版との違いや企業版の留意点などを中心にお話ししたいと思います。

1. 個人版ふるさと納税のおさらい

「ふるさと納税」という言葉が使われていますが、実際には地方自治体への「寄付」にあたります。個人がふるさと納税(寄付)をした場合は、寄付した金額の2,000円を超える部分については、上限金額(※)まで所得税・住民税から控除されたうえに、寄付した地方自治体からお礼として様々な返礼品を受け取ることができます。

※控除額の上限金額は、寄付する人の所得額や家族構成などによって異なります。

【参考】
総務省 ふるさと納税:全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安

ざっくり言うと、あなたがどこかの地方自治体に3万円を寄付した場合は、所得税と住民税が合わせて28,000円(=30,000円-2,000円)安くなるということです。さらには、寄付した地方自治体によっては、特産品などの返礼品をもらえることもあります。

そのため、所得税・住民税の税額控除を受けることができ、さらには自分がほしい家電や食べ物が手に入るという とてもうれしい制度になっています。

2. では、企業版ふるさと納税とは?

それでは企業版ふるさと納税とは?というと、正直なところ個人版のような大きなメリットはありません。企業版ふるさと納税が導入される前までは、そもそもとして、企業が地方自治体へ寄付を行った場合には、全額が費用になるだけでした。

例えば100の寄付をしたからといって、個人版のように100相当の税額控除などを受けられるようなメリットがあるのではなく、消耗品費(費用)を支出した場合となんら変わりのないものでした。

では、企業版ふるさと納税はというと、その費用を支出した場合と同様でしかなかった効果をパワーアップさせたものです。いままでの取り扱いに併せて、寄付した金額の30%を上限に税金から控除できることになり、最大メリットは以前の2倍となりました。

つまり、「費用計上して課税所得が減る」+「寄附金の30%を納付したことにできる」という2つのメリットが得られるということです。

しかし、効果は個人版と比べると、やはり限定的です。

たとえば、100の企業版ふるさと納税を行った場合(税率30%)で検討してみましょう。

企業の法人税は、「企業の利益(課税所得)×税率」で求められます。仮に税率が30%とした場合、まずは100のふるさと納税を行うことによって費用が100計上されます。税金への影響は、「100×30%」で「−30」となります。併せてパワーアップ後の効果である税金控除額「−30」を考慮しても「−60」。100を寄付しても60のメリットしか得られないため、100−60=40で、40は支出(持ち出し)となってしまい、個人版との差は歴然です。

企業版ふるさと納税は、寄付をしてもどうしても持ち出しが発生してしまうため、損得勘定で考えるのではなく、「社会貢献を通じて自社の魅力をアピールする」という寄付本来の考えに基づく必要があると言えます。

3. 企業版ふるさと納税はハードルが高い!?

企業版ふるさと納税を行い、2.のメリットを受けるためには様々な要件をクリアする必要があります。代表的な要件として下記のようなものがあります。

  • 青色申告法人であること
  • 本社のある地方自治体への寄付はNG
  • 国が認定した「事業」に対して寄付を行っていること
  • 1回当たりの寄付が10万円以上であること

など

寄付したからすんなりOKとはいかないようです。

4. 返戻品をもらったら受贈益(利益)計上

個人版ふるさと納税では返戻品競争の現状を改めるべく、総務省から各自治体に豪華すぎる返礼品や換金率の高い返礼品について、自粛を行うよう通知が行われました。

そもそもとして企業版ふるさと納税では返礼品をもらうことが禁止されていますが、もし仮に返礼品をもらった場合には、返戻品の時価相当額を利益(受贈益)として計上する必要があると考えられます。

「せっかく寄付をしてもらった返礼品なのに、またそれに課税されちゃうなんて。」と、トホホな話になる前に個人同様、ふるさと納税を行う場合は事前にじっくり計画を立てましょう!

三浦 勝

MARC税理士事務所 税理士(東京税理士会麻布支部所属 登録番号115770) 個人税理士事務所、国内系税理士法人、外資系税理士法人を経て、2015年6月に独立開業。現在まで1,000社を超える法人・個人の申告に携わる税務申告のエキスパート。