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一人会社で役員報酬が少額(または0円)でも年末調整ってするべき?

起業して最初の年末、ヨソの会社は年末調整で大変そうだけど、ウチは自分一人の会社だし役員報酬も少額で、年収が103万円以下だと所得税は課税されないって聞いたことがあって。だから、僕の場合は年末調整はやらなくてもよいのでしょうか?


相談者
独立して1年目。仕事も軌道に乗って、おかげさまでなんとか年末はゆっくりできそうです。
村田税理士
仕事も順調そうですね。初めての年末調整、じっくり勉強する時間もありそうで良かったですね。
相談者
いや、ウチの会社は自分1人で役員報酬も少額なので、給与から所得税を天引きしていないんです。
相談者
そもそも源泉徴収(※1)をしていないから、年末調整しても源泉所得税(※2)の還付もされないと思うので、年末調整はしないつもりでいます。この1年、起業でいろいろ大変だったので年末くらいはゆっくりしようと思っているんですよ。

※1:役員報酬や従業員の給料から所得税を天引きすることを「源泉徴収」といいます。課税所得(収入から社会保険料などの控除額を差し引いたもの)が月88,000円未満の場合は、源泉徴収は不要です。ただし、2か所以上から給与をもらっていて、別の会社で「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している方は、88,000円未満であっても源泉徴収されます。

※2:源泉徴収された所得税を「源泉所得税」といいます。

村田税理士
そのパターンですと、広い意味での年末調整は必要ですよ。会社の年末調整は源泉所得税を還付するだけでなく、税務署や市区町村にも住民税などを算出するための書類を提出する必要があります。そのため、「毎月の給与計算で源泉所得税がない=何もしなくて良い」というわけではないんです。
相談者
知り合いの会社は「役員報酬0円だし、一切書類は作っていない」って言っていたのですが・・・。
村田税理士
その会社でも最低限作成、提出する書類はあります。ちょっとパターン別に見ていく必要がありますね。

役員報酬が少額(毎月の源泉徴収額が0円)の場合でも、年末調整をしたほうがいい!?

<パターン1:少額の役員報酬で毎月の源泉所得税がないケース>

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相談者
私の役員報酬は月額10万円、介護保険料を含めた社会保険料を控除すると約85,000円ほどです。課税所得が88,000円未満の場合は、毎月の給与計算では源泉所得税を差引かなくてもよいので、源泉所得税は0円。毎月、源泉所得税を支払っていないので、年末調整をしたところで源泉所得税が還付されることはない。だから、年末調整の生命保険控除とか、ややこしいやつはやらなくていいですよね?
村田税理士
このケースでは、生命保険料控除や地震保険料控除などの年末調整の控除が受けられる場合は、ちゃんとやったほうがいいですね。

(1)前職の収入がある場合

本年度中に前職の収入がある場合、年末調整では前職の収入も含めて年間の所得税の金額を確定計算します。そのため、前職の給与から源泉徴収されている所得税が年末調整の計算で還付されることとなります。

(2)年収100万円超の場合

所得税は年収103万円以下あれば非課税ですが、住民税は年収100万円超から課税されます。(ただし、市区町村により若干異なります。)

村田税理士
社会保険料控除後の課税所得が約85,000円/月ですと12か月で約102万円となります。所得税は年収103万円以下なので課税されませんが、住民税の課税がありますので、生命保険控除などを活用するメリットがあります。
相談者
なるほど、今年は前職の収入もあるし、来年の住民税のことを考えると年末調整の計算は、やっておいたほうがいいですね。
村田税理士
御社の場合、年末調整で作成・提出する書類は以下となります。

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役員報酬が0円の場合は、法定調書合計表のみ提出すればOK!

<パターン2:役員報酬0円のケース>

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(出典:freepik)

相談者
そうすると、役員報酬0円だったら何も提出しなくていいんじゃないですか?
村田税理士
税務署への法定調書合計表だけは提出する必要があります。源泉所得税の納付書も、給与0円でも半年ごとに提出していますよね。

【参考】 (国税庁e-Taxよくある質問)

Q:年末調整等で、源泉所得税及復興特別所得税の納付税額が0円となる場合には、どうすればいいですか。

A:書面による場合と同様に、合計額(納付税額)を0円と入力した徴収高計算書データを作成の上、受付システムに送信してください。

相談者
知り合いの会社も源泉所得税の納付書を提出しなかったら、税務署から電話がかかってきて、「源泉所得税がゼロ円であることは申告してください。申告がないと税務署では分からないので、納付税額ゼロ円でも納付書を提出してください」って言われたそうです。
村田税理士
同様に、法定調書合計表も源泉徴収税額が0円であっても提出が必要です。

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副業で本業とは別で給与をもらっている場合は、法定調書合計表などの書類を提出する必要あり!

<パターン3:乙欄で源泉徴収しているケース>

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相談者
私は副業で起業しているので、勤務先では「甲欄」、自分の会社の役員報酬は「乙欄」で源泉徴収しています。「乙欄」で源泉徴収している場合は、年末調整は必要ないんですよね?

※源泉所得税の「甲欄」、「乙欄」とは?

給与計算で源泉徴収税額を求めるために使用する「給与所得の源泉徴収税額表」の「甲欄」、「乙欄」を指します。

「甲」欄は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している方に適用されます。

「乙」欄は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない方に適用されます。

2か所以上から給与をもらっていて、別の会社で「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している方の場合に適用されます。

村田税理士
この場合も源泉所得税の還付計算という意味での年末調整は不要ですが、ケース1と同様の書類を作成・提出する必要があります。
相談者
乙欄の場合に気を付けることはありますか?
村田税理士
年末調整をしなかった役員の源泉徴収票は、年収150万円超ではなく年収50万円超から提出義務が発生しますので、その点が甲欄の場合と異なります。

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年末調整せず自分で確定申告しただけではダメ。提出しなければならない書類がある!

<パターン4:自分で確定申告をするケース>

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相談者
しかし、いろいろと提出する書類も多いもんですね。個人事業主の友人は「税務署に確定申告の書類を提出するだけで、市区町村への申告なんてしていない」って言っていました。私も確定申告すれば、書類もたくさん作らないで済みますか?
村田税理士
それはダメですね。会社と個人とは別の事業主体なので、個人で確定申告するから会社の年末調整だったり、各種書類の提出だったりが免除されるというものではありません。

所得税の源泉徴収も、個人が確定申告するから源泉徴収しないでいい。というものではなく、会社として行うべき源泉徴収や納税、書類の作成については、きちんと行う必要があるのです。

相談者
なるほど。一人会社の場合でもいろいろと年末調整でやらなければならない書類作成があるのですね。書類提出に漏れがないように気をつけます。

村田 光平

公認会計士、税理士 、行政書士 、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央青山監査法人、2007年に京都監査法人東京事務所を経て、2013年より税理士事務所を開業。年間50社の会社設立手続を行い、法務・税務の両面からサポートを行うスタートアップ企業のエキスパート。