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人間ドックは経費になって助成金も出る?確認しておきたい税務と助成金の話

がん検診を公約にした都知事選もあって、自分も人間ドックはちゃんとやっておいたほうがいいなと感じる今日この頃。でも、人間ドックって高額だし福利厚生費で会社の経費にしていいものなのかな?

え?会社の経費にできる上に助成金ももらえる?
経費については税理士さんに。助成金については社労士さんに詳しく説明してもらいます。

1.人間ドック受診料は経費にできる

相談者
そういえばここ何年かは健康診断すら行ってなくて・・反省です。
村田税理士
健康診断は従業員含めて全員、年一回は受診する義務がありますのでBizerの「ToDoリスト」機能でも健康診断の手続きについて確認しておいてください。

※「ToDoリスト」ー「定期健康診断を実施する(年1回)」画面

相談者
それで今回気になったのが、普通の健康診断ではがん検診まではできないのでせっかくだから人間ドックを受けてみようと思いまして。

健康診断に比べると費用も高いのですが、会社の経費にできるのでしょうか?

村田税理士
まず、この手の「福利厚生費」は役員のみなど特定の人に限定してしまうと、その人に対する給与(役員報酬)となってしまいますので、従業員全員が平等に受診できることが必要です。
相談者
社員旅行のコラムの時にも、福利厚生費は「全員平等」ってありましたね。

夏休みはピークオフで社員旅行に!経費にするために気をつけるポイント

https://bizer.jp/archives/2956

村田税理士
人間ドックの場合も同様ですね。一定年齢以上は受診できる、というのは対象者を恣意的に選択するものではないので平等な扱いなのでOKです。
相談者
で、人間ドックは福利厚生費として会社の経費に…
村田税理士
なります。国税庁の質疑応答事例にもちゃんと明記されています。

国税庁質疑応答事例:人間ドックの費用負担

【回答要旨】

役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には課税の問題が生じますが、役員又は使用人の健康管理の必要から、雇用主に対し、一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられていることなどから、一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができ、かつ、検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する場合には、給与等として課税する必要はありません。

村田税理士
特定の人だけを対象にするのでなければ、個人に対する給与(役員報酬)にはならずに、会社の福利厚生費にできるということですね。
相談者
おお!これはありがたいです。会社の経費にできるのであればウチの会社も少しずつ福利厚生を整備していこうと思います。
村田税理士
はい、経費についてはクリアになりましたね。次は、社労士さんから助成金について説明してもらいましょう。

2.人間ドックを受診してもらえる助成金

榊社労士
せっかくなので助成金を申請してみてはいかがでしょうか?
相談者
え?人間ドックの受診でもらえる助成金があるのですか?
榊社労士
はい、厚生労働省で「職場定着支援助成金(雇用管理制度助成)」というのがありまして、通常の健康診断+αの健康診断の受診制度を導入して実施することで助成金がもらえます。

厚生労働省 職場定着支援助成金:雇用管理制度助成

相談者
これはどんな助成金なのですか?
榊社労士
御社のように+αの健康診断の受診制度を導入するなど、働きやすい会社とするための制度を導入した企業に支給される助成金で、健康診断の他にも研修制度の導入など4つの雇用管理制度が助成金の対象となります。

[1]評価・処遇制度:評価・処遇制度、昇進・昇格基準、賃金制度、諸手当制度のいずれかの制度を導入すること。

[2]研修制度:職務の遂行に必要な能力等を付与するため、カリキュラム内容、時間等を定めた職業訓練・研修制度を導入すること。

[3]健康づくり制度:人間ドック、生活習慣病予防検診、腰痛健康診断のいずれかの制度を導入すること。

[4]メンター制度:キャリア形成上の課題及び職場における問題の解決を支援するため、メンター制度を導入すること。

榊社労士
人間ドックは[3]健康づくり制度に該当します。人間ドックだけでなく、生活習慣病予防検診の受診を導入した場合でも助成金の対象となります。
[3]健康づくり制度

相談者
助成金がもらえるまでのフローを教えていただけますか?
榊社労士
おおまかに言うと、以下の流れとなります。

① 働きやすい会社とするために導入する制度を決めてハローワークに導入計画を提出。人間ドックであれば、いつの期間に従業員に受診してもらうかも計画に記載。

② 導入する制度を就業規則等に反映させ、労働基準監督署に提出

③ ハローワークに提出した計画どおりの期間に人間ドックを受診。

制度計画期間最終日の翌日から2か月以内に助成金申請書を人間ドックの領収書等を添えてハローワークに提出

⑤ 審査の結果、不備がなければ「制度導入助成金」の支給が通知。

⑥ さらに12ヵ月後、退職率が目標値よりも低ければ「目標達成助成金」を申請、受給することが可。

相談者
この助成金、いくらもらえるんですか?
榊社労士
上記4つの制度それぞれにつき10万円、全部導入した企業は40万円の助成金となります。
相談者
それでは、とりあえず4つの制度を導入・届出して、ちゃんとできたものを報告すればOKですね。
榊社労士
いえ、最初に届出をして、労働局の認定を受けた計画に沿って制度の導入をしなければ、計画と違うことをしているとして、助成金が不支給になってしまう恐れがあります

認定を受けた計画書と実際に導入する制度の内容に変化が生じてしまう場合は、必ず労働局に確認して、指示を仰いて下さい。労働局の担当者から、変更届の提出の要否や、計画そのものを出し直す必要があるなど、状況に応じて対応すべきことを教えてもらえます。「これくらい大丈夫だろう」という思い込みの判断は絶対にしないで下さい。

相談者
なるほど、ちゃんと計画通りに雇用管理制度を導入し、変更がある場合は必ず労働局に伺いを立てるということですね。
榊社労士
この助成金の目的は働きやすい職場づくりのための制度をちゃんと導入することに対する助成金ですので、とりあえず申請しておいて助成金がもらえたらラッキーみたいなのはダメですよ。
相談者
はい、人間ドックは助成金は関係なしに福利厚生でやろうと思ってましたので。これで従業員が少しでも定着してくれればいいですし。
榊社労士
あと、実施報告では対象となる従業員の出勤簿や賃金台帳の提出も必要ですし、受診の領収書なども必要となります。提出する書類のボリュームは結構多いので事前によく確認しておいてください。

※提出書類一例

相談者
しっかり労務管理ができている会社でないと助成金は支給されないということですね。
榊社労士
また、ある会社の事例ですが、人間ドックの受診は会社の福利厚生として就業時間内に受診する必要があるところを、出勤簿を確認したら有給休暇の日に人間ドックを受診していたため助成金の受給要件を満たしていないとなってしまったケースもありますので、受給の要件にも注意が必要です。

相談者
なるほど、休みの日に人間ドックを受診できても働きやすい職場ではないですからね。。
榊社労士
この「職場定着支援助成金(雇用管理制度助成)」ですが、働きやすい会社とするための制度を導入した結果、12ヵ月後の退職率が厚生労働省の定める目標値よりも低くなれば、さらにボーナスで60万円がもらえます。

榊社労士
御社の場合ですと雇用保険加入人数が30~99人ですので、現在よりも退職率を7%削減したら60万円のボーナスとなります
相談者
ウチは今まで退職者がいないので退職率は下げようがありませんが。
榊社労士
マイナスの退職率というのはありませんので、その場合は退職率0%が目標値となります。

相談者
なるほど、まずは人間ドック受診の制度を作ってみようと思います。
榊社労士
本助成金は導入する雇用管理制度が正しく就業規則に反映されていなければ、助成金の支給要件を満たさないようなケースもありますので、せっかく助成金を申請するのであれば社労士に相談しながら進めるのがよいです。

就業規則作成サービス50,000 円~

https://bizer.jp/rules_of_employment

相談者
ありがとうございます。就業規則もだいぶ昔に作ったままなので、いい機会なので就業規則作成サービスでしっかり見直ししてもらおうと思います。
専門家プロフィール

村田 光平(むらたこうへい)
公認会計⼠、税理⼠、⾏政書⼠、公益社団法人日本監査役協会会員。
2005年に中央⻘⼭監査法⼈、2007年に京都監査法⼈東京事務所を経て、2013年より税理⼠事務所を開業。年間50社の会社設⽴⼿続を⾏い、法務・税務の両⾯からサポートを⾏うスタートアップ企業のエキスパート。

榊 裕葵(さかきゆうき)
ポライト社会保険労務士法人 社会保険労務士。
上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務後、社会保険労務士として独立。勤務時代、常に経営者の側で仕事をしてきた経験も活かしながら、スタートアップ企業の労務管理体制の構築や、助成金申請の支援を積極的に行っている。

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