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年末調整に必要な書類の回収は紙?それともクラウドで行う? 知っておくと便利な方法とは!?

あと2か月ほどで2016年も終わりですね。
年末の忙しい時期ですが、忘れてはならないのが年末調整です。

年末調整の流れって?

年末調整の流れを簡単にいうと、下図の通りです。
今回は、「①年末調整の準備」の部分についてお話したいと思います。

実務的に整理すると、年末調整をするためには扶養家族の情報や生命保険控除の情報が必要で、これらの情報を事前に入手する準備作業が必要となりますが、年末調整の準備には、以下の3通りの対応方法があります。その3通りの方法を順番に紹介しますので、自社に合った方法で、年末調整を是非スムーズに進めてください。

  1. 従来通りの方法(申告書などを紙で管理する)
  2. 会社がドラフトを作成してあげる方法(申告書などを紙で管理する)
  3. クラウドソフトを利用する方法(紙は不要)

1. 従来通りの方法(申告書などを紙でやり取りする)

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「紙」とは、「扶養控除等申告書」、「保険料控除申告書」のことで、従業員はこの2種類の申告書に必要事項を記入し、会社に提出することで年末調整を受けることができます。

流れとしては、会社が申告書を従業員へ配布し、それを従業員に記入してもらい、回収した上で内容を確認し、2016年度の所得税額を確定し、12月または1月に支払う給与明細に反映させるという手順です。

2種類の申告書のうち、扶養控除申告書は家族の生年月日などの情報を記入する書類なので比較的問題なく従業員が記入できます。しかし、保険料控除申告書に関しては、生命保険、地震保険などその年に支払った保険料に応じ減税を受けるための書類なのですが、保険会社から届いたハガキなどを見ながら数字を拾って、申告書に記入したり、一部を計算したりする必要があるため、一般の人にとっては、これがなかなか難しい作業です。

会社としては、従業員からの質問に答えるのが大変だったり、回収した申告書に誤りがあって、それを訂正しながら年末調整を行わなければならなかったりで、総務部や経理部といった年末調整を担当する部署に大きな負担がかかってしまうことも珍しくありません。

2. 会社がドラフトを作成してあげる方法(申告書などを紙で管理する)

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扶養控除申告書は従業員に書いてもらい、記入が難しい保険料控除申告書は、本人から預かった情報をもとに会社でドラフトを作成してあげるという方法です。

保険会社から届いたハガキや、途中入社の方であれば年度途中まで自分で支払っていた国民年金や国民健康保険の納付証明書類などを会社が一式預かり、本人の代わりに会社側でドラフトを作成するイメージです。

従業員に説明して書いてもらうよりも、年末調整に関する知識を持っている担当者が最初から記入したほうが、結果的に時間はかからないということです。税理士や社会保険労務士と契約をしている場合は、これらの専門家にドラフトを作成してもらうことも可能でしょう。

なお、保険料控除申告書はあくまで本人が作成すべき書類であるため、社内の担当者や外部の専門家が作成した場合であっても、最後は、本人にチェック及び押印をしてもらいドラフトを完成させる必要があります。

3.クラウドソフトを利用する方法(紙は不要)

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クラウドソフトを利用して、扶養控除申告書や保険料控除申告書を作成するという方法です。

クラウド型給与計算ソフトである「給与計算freee」クラウド型の人事労務管理ソフトの「Smart HR」などが、クラウド上での年末調整に対応しています。

クラウドソフトを使って年末調整を行うメリットは、申告書を紙でやり取りする必要がなく、クラウドソフト上に従業員にログインしてもらい、画面に従って情報を入力してもらうだけで、自動的に扶養控除申告書や保険料控除申告書が完成するということです。

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例:給与計算freee(引用先:https://www.freee.co.jp/payroll/yearend

とくに、保険料控除申告書は、紙で年末調整を行う場合は複雑な計算式に当てはめなければなりませんが、クラウドソフトの画面では、いくつかの項目を入力すれば、あとはコンピュータが自動で計算してくれます。

これらのクラウドソフトを契約するのにはコストが発生しますが、従業員の書類作成にかかる時間や年末調整を担当する部署の労務コストなどが軽減されることを考えると、費用対効果がプラスになる会社も多いのではないかと思います。

とくに、「給与計算freee」の場合は、給与計算と年末調整が行える機能がクラウド上でシームレスに提供されています。そのため、年末調整の結果が自動的に給与明細にも反映され、人事・労務担当者の手間の削減にもつながるでしょう。

ただし、クラウドソフトもデメリットがあります。年末調整の作業をスムーズに行うためには、従業員全員がメールアドレスを持っていたり、従業員がパソコンやスマートフォンの操作にある程度は慣れていたりしなければならないので、状況によっては導入しにくい会社もあるかもしれません。

総括すると、従業員全員がある程度、年末調整に慣れているならば、従来通り、扶養控除申告書と保険料等控除申告書を配布回収する方法で問題ないでしょう。

そうでない場合には、従業員数が少なければ書き方の説明会などを行った上で書いてもらっても良いかもしれません。その他に、保険会社からのハガキなどの元資料を集めて会社や社会保険労務士などの外部専門家が保険料等控除申告書を、あらかじめ下書きする方法や、クラウドソフトを導入する方法も、検討をしてみる価値があると思います。

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榊 裕葵

ポライト社会保険労務士法人 社会保険労務士。上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務後、社会保険労務士として独立。勤務時代、常に経営者の側で仕事をしてきた経験も活かしながら、スタートアップ企業の労務管理体制の構築や、助成金申請の支援を積極的に行っている。