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BYODはメリット・デメリットを理解して正しく活用しよう!

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一昔前は、会社でパソコンを使って仕事をすると言えば、会社から支給されたパソコンを、社内の自分のデスクで使うというのが当然の光景でした。
ところが最近は、ノートパソコンが小型軽量化され持ち運びが容易になったり、Webブラウザ経由で利用するクラウド型のビジネスソフトが増えてきたため、個人の私物のパソコンやスマートフォンを仕事で利用することを認めたり、あるいは、推奨したりする会社も増えてきました。

BYODとは?

そのような中、「BYOD」という言葉が市民権を得つつあります。
BYODとは、「Bring Your Own Device」の頭文字をつなげた造語で、「自分のデバイスを(職場に)持ち込む」という意味です。
BYODには様々なメリットがあるので、導入を検討している会社も少なくないようですし、スタートアップ企業では自然発生的にBYODで仕事をすることが暗黙の了解になっているケースもあります。

ただし、逆にBYODで仕事をすることによって生じるデメリットも皆無ではありません。
そこで、本稿ではBYODで仕事をする場合のメリットとデメリットを、会社および社員双方の目線から解説していこうと思います。

 

会社にとってはコスト削減!社員にとっても「楽」!

まずは、メリット面からみていきましょう。
会社にとっての大きなメリットは、やはりコストの削減という観点です。
パソコンを会社支給ということにしたら、新入社員が入社するたびに新しいパソコンを用意しなければなりませんので、どんどん社員が増えている段階の成長期の企業などではとくに、パソコン購入費用の負担は小さいものではありません。

BYODなら、このコストを削減することが可能になります。
また、社員が自分のノートパソコンやスマートフォンで仕事をする訳ですから、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務など、柔軟な働き方を認めやすくなります。

たとえば、育児休業を取得している社員が、まずは在宅勤務で職場復帰をするというようなこともBYODが前提なら容易に可能となるでしょう。
あるいは、台風や大雨で出社が危険な場合は、無理して出社をするか、仕事を諦めるかの二択ではなく、在宅勤務で仕事を進めるという建設的な選択肢が取れるのもBYODの強みです。
さらに、近年は国も「テレワーク」を普及させようとしていますが、たとえば、東京の会社がテレワーク前提で地方や海外在住の人と雇用契約を結ぶ場合は、BYODという考え方が無ければビジネスモデルは成り立たないでしょう。

次に、BYODにおける社員側のメリットです。
社員にとってのメリットは、「」という言葉で表すのが適切だと思います。

たとえば、キーボードを打つにしても、パソコンによってキーの配置や大きさが異なりますから、作業効率といった面では、慣れ親しんだ自分のパソコンを使うのが一番です。
また、出張に行く場合のことを考えると、BYODならパソコン1台で済みますが、会社のパソコンと自分のパソコンが別だったら、自分のパソコンを諦めるか、荷物がかさばることを覚悟で2台のパソコンを持ち運ばなければなりません。

スマートフォンもBYODならば持ち歩くのは1台で済みます。
BYODで無い場合、個人用と会社用のスマートフォンを常に2台持ち歩くのは不便です。
バッテリーの管理も2台気にしなければならないのは非常に大変です。

セキュリティには要注意!プライベートとの区切りも意識して

続いて、BYODデメリットの面です。
まずは、会社のデメリットから説明します。

会社にとってのデメリットとして挙げられるのは、やはり、セキュリティ面でのリスクです。
業務で使っているときのデバイスの紛失リスクは会社がパソコンやスマートフォンを支給する場合も同じですが、プライベートで使っているときに紛失しても、業務に関する情報が漏えいする可能性があるという点でリスクが高まります。

また、プライベートでアクセスしたサイトでウイルス感染したり、プライベートでインストールしたアプリの影響で業務に関する情報が漏えいしたりする危険性も考えられます。
BYODで使うデバイスには特定のアプリをインストールすることを禁止するとか、特定のサイトへのアクセスを禁止するということも考えられますが、もともとは個人所有のデバイスなので、どこまでの制限が法的に許されるのかということを慎重に検討する必要がありまます。

もう一つ、BYODのデメリットとして挙げられるのは、サービス残業や長時間労働の温床になる可能性があるということです。
確かに、柔軟な働き方を可能にするのがBYODのメリットではあるのですが、逆に、どこまでが仕事で、どこからがプライベートなのかの線引きが難しくなってしまうという問題点はありますので、BYODを導入する場合には、各会社の実態に合った形で、BYODにおける労働時間を管理するためのルールの整備を行っておきたいものです。

次に、社員にとってのデメリットです。
こちらは、会社にとってのデメリットを逆側から見る形になりますが、プライベートと仕事の区切りが曖昧になってしまうということが挙げられます。
顧客からの連絡メールが入るとポップアップが立ち上がるような設定になっている場合は、仮に直ちに対応する必要は無いにしても、やはり気になってしまうので、極端な話、24時間365日、仕事のことが頭から離れなくなって、精神的に疲れてしまうという可能性もあります。

実際、私自身が相談を受けた事例でも、「通勤時間やプライベートな時間にもスマートフォンのアプリに仕事の連絡が次々届いて、気が休まらずにうつ病になってしまった」という相談を受けたことがあります。
ですから、BYODを導入する場合は、自分のデバイスをプライベートで使っているときは、仕事関係のソフトウェアやアプリから解放されるような設定にできるのか、ということなど、設定面のことを気にしたほうが良いかもしれません。

もう1つ、社員にとってのデメリットは、「コスト」です。
たとえば、スマートフォンやポケットwifiでは、送受信できるデータには上限があり、それを超えると追加料金が発生します。
また、使用頻度が高ければ、それだけPCやスマートフォンの劣化も速まってしまいます。
とくに、バッテリーなどは強く影響を受けるでしょう。

この点に関しては、社会通念上、「BYOD手当」という形で会社が補助をすることが妥当とされています。
ですから、もし会社から「当社はこれからBYODにします」というような話があった場合には、「BYOD手当は出るのですか?」という確認をするようにして下さい。
たとえば、自家用車を営業や出張に使った場合には、走行距離に応じたガソリン代や、駐車場代などが会社から実費精算されるのは当然だと思いますが、BYODに関してもそれと同じ感覚を持って頂いて良いと思います。

まとめ

BYODは、上手に利用すれば会社にとっても社員にとっても、大きなメリットのある仕組みだと思います。
しかしながら、セキュリティに対する準備が不十分だったり、社員に精神面、金銭面での負担をかけてしまうような導入形態になってしまっていたりしたら、不幸な結果になってしまいます。

BYODのメリット・デメリットをよく理解したうえで、自社の状況も踏まえ、会社・社員の双方が安心し、納得がいく形でBYODを導入したいですね。

榊 裕葵 さかき ゆうき

榊 裕葵

ポライト社会保険労務士法人 社会保険労務士。上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務後、社会保険労務士として独立。勤務時代、常に経営者の側で仕事をしてきた経験も活かしながら、スタートアップ企業の労務管理体制の構築や、助成金申請の支援を積極的に行っている。