専門家が語る

取締役会が無効に!?取締役会の開催・議事録作成でやらかすベンチャーの失敗事例

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けられることになりました。これから事業もエンジン全開で頑張りたいと思います。出資を受けるにつき、次のことをVCから求められました

  • VCから取締役を就任させること
  • 取締役会を設置すること

とりあえず、取締役3人と監査役1人がいれば「取締役会を設置すること」ができると聞きました。なので、急いで役員の人選(VCから就任する取締役を含め)を行なって、司法書士に登記手続きをしてもらって一件落着しました。

が、さらにVCの人から
「これから、毎月取締役会を開催してもらいたいので、招集手続きなどもよろしく。」って言われてしまって、私は何をすればよいのでしょうか?

覚えておきたい取締役会のポイントについて、専門家に解説してもらいました。

 

取締役会とは?

取締役会とは、株主に重要事項の一部の決議を任された経営の専門家である取締役の集団です。

そもそも株式会社は、株主がお金を出資してその出資金(資本金)を元手に事業を行います。そして、会社に出資した株主が会社の事業目的などの重要項目を決定し、決定した事業を運営するための取締役を選任します。

このように株式会社というものは、「株式会社の重要事項」を株式会社の所有者である「株主」によって株主総会で決定し、株主に選任された「取締役」が会社の事業を運営する仕組みになっています。

また、会社の規模が大きくなるにつれ、以下のような問題が発生します。

  • 会社の事業運営に関する「専門的な判断」を株主総会で決定しきれなくなる。
  • 重要事項を決定する都度、多くの株主を招集して株主総会を開催することが困難である。

そこで、今まで株主総会で決議していたことの一部経営の専門家である取締役の集団に任せようというのが「取締役会」です。

取締役会の設置には、「取締役3名以上監査役1名以上」が必須の条件です。
理由は、取締役3名以上の多数決で「会社の重要事項」を決議することにより、ある1人の取締役が独断で重要事項を決断してしまうことを防ぐためです。

また、監査役の設置によって、取締役の多数決による判断が適切、適法に行われているかを業務監査(取締役の活動に不正や違法がないかなどの監査)の専門家である監査役がチェックするため、株主は安心して取締役会に重要な意思決定事項を任せることができる仕組みとなっています。

その他、監査役は、株主総会への報告義務(会社法第384条)、不正があった取締役の行為を差し止め請求することができる権利(会社法第385条)などによって、会社を常にチェックしています。

 

どんなときに取締役会をするの?

取締役会では、以下の「会社の業務に関する重要事項」を意思決定します。

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定(会社法362条2項)
  • 取締役の職務の執行の監督(会社法362条4項)
  • 代表取締役の選定及び解職(会社法362条4項)
  • 重要な財産の処分及び譲受け(会社法362条4項)
     
  • 多額の借入(会社法362条4項)
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任(会社法362条4項)
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止(会社法362条4項)
  • 株主総会の招集(会社法298条4項)
     
  • 取締役の競業取引の承認(会社法356条)
  • 取締役の利益相反取引の承認(会社法365条1項)
  • 計算書類等の承認(会社法436条3項)
  • その他、重要な各種契約締結の承認

 

取締役会は全員集まらないと開催できないのか?

取締役会は、決議に参加できる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数により決議します。したがって、必ずしも取締役全員が集まる必要はありません。

また、取締役会では以下の2点で気をつけたいことがあります。

1)決議事項に利害関係のある取締役は、議決権がない
2)定款の定めによっては、出席者の割合や議決割合を増減できる

 

 

1)決議事項に利害関係のある取締役は、議決権がない

取締役会の決議事項に利害関係のある取締役には、その決議事項の議決権がありません。

例1:
取締役4人の取締役会で、会社から取締役Aへの金銭の貸付けを決議する場合

取締役Aは議決権がないので、残りの取締役3名の過半数の2名の出席で取締役会が成立し、取締役A以外の出席取締役の過半数により決議。

 

 

例2:
取締役4人の取締役会で、代表取締役を選任する決議する場合

代表取締役の候補者の取締役は、決議に利害関係のある取締役には当たらないので、取締役4名の過半数である3名の出席で取締役会が成立し、出席取締役の過半数により決議。

※なお、代表取締役の解任決議の場合は、当該代表取締役は特別利害関係があるとされているため決議に参加することができません。

 

 

2)定款の定めによっては、出席者の割合や議決割合を増減できる

定款により取締役会の出席割合や議決割合を加重(増加)させることもできます。

会社法
(取締役会の決議)
第三百六十九条   取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

2  前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

 

取締役会を開催する手順は?

取締役会は、以下の流れで開催します。

  1. 取締役会の招集を決定する
    取締役会の議案、開催日時、場所を決めます。
     
  2. 議決権の行使方法について決定する
    取締役としての意思を取締役会で示すことができる権利を「議決権」と言います。
    議決権の行使は、次の2つの方法を選択できます。

    ・取締役会へ出席し意思表示を行う
    ・電話会議等で出席し意思表示を行う(開催日に都合が付かない事情などを考慮)

    なお、株主総会とは異なり、取締役会での議決権は代理人に委任することはできません。
     
  3. 取締役・監査役に招集通知を送付する
    各役員への招集通知手段は、書面、電磁的方法(メールなど)、招集手続きを省略するなど様々です。
     
  4. 取締役会を開催し決議を行う
    取締役会での意思決定がどのように行われたかを明確にするため、各取締役及び監査役の発言の要旨について後日取締役会議事録に記載する必要があります。
     
  5. 取締役会終了後の事務作業を行う
    取締役会が終わったら、すぐに議事録を作成しましょう。また、決議内容によって登記申請など、必要な手続きを行います。

 

取締役会にまつわる失敗事例

1)株主総会の招集決議を忘れた

急いで株主総会を開催しなければならなかったため、代表取締役が独断で株主総会を招集してしまった。これはNGです。
取締役会設置会社では、株主総会の招集は事前に取締役会で決議する必要があります株主総会の開催の前には取締役会が必要だということを忘れないようにしましょう。
 

2)取締役会の出席者が足りていなかった

取締役会の出席人数が足りていない場合もNGです。

例えば、
取締役4名の会社の取締役会2名の取締役のみで以下の決議を行なった。

【決議事項】
議案1会社から取締役Aへの金銭の貸付け
議案2取締役会の招集

【出席取締役】
取締役A 欠席
取締役B 欠席
取締役C 出席
取締役D 出席

【決議の効力】
議案1有効]:会社から取締役Aへの金銭の貸付け
決議の利害関係者である取締役A以外の取締役3名の過半数である2名の出席があるので決議は有効



議案2無効]:取締役会の招集
決議の利害関係者はいないので取締役4名の過半数である3名の出席が必要。出席人数が2名のため決議は無効

取締役Aは、利害関係のある議案1以外は議決権があることを知らなかったため欠席。
取締役Bは、利害関係者がいる議案1は取締役2名の出席で良いので自分が欠席しても問題ないと思っていたが、利害関係者のいない議案2は取締役3名の出席が必要という事に気が付かなかったため欠席。

取締役が、取締役会の決議のために必要となる出席数を正しく理解せずに欠席して決議が無効となってしまう。なんて事がないように気を付けましょう。

 

3)一部の取締役が書面で議案の賛否を回答して決議していた。

取締役Aが取引先との打ち合わせで取締役会に参加できないため、議案について賛成の旨を「書面に記載」して提出した。

取締役会は、各取締役相互の議論により適切な業務意思決定をすることを目的としているため、事前に書面で決議の賛否を提出しても「無効」となります。

例外的に書面での決議が認められるケース(会社法第370条)は、定款に定めることにより、

  • ある取締役が取締役会の議案を提案、
  • その提案について取締役全員が同意し、かつ、監査役全員が異議を述べないとき

上記の2つの条件に該当する場合のみ、その議案について取締役会決議があったものとみなすことができます。一部の取締役のみ、書面で議決するという決議方法は認められません。

Bizerをご利用の場合

取締役会の手続きに関しては、「ToDoリスト」機能の「取締役会を開催する」で確認することができます。

「ToDoリスト」ー「取締役会を開催する」

 

困ったことは頼れる専門家(士業)に何度でも相談しよう

Bizer(バイザー)では、今回の取締役会に関する事柄に限らず、バックオフィス業務(総務・労務・経理・法務・知財など)についても月額2,980円で何度でも専門家5士業にご相談いただけます。Bizerコンシェルジュがあなたのご相談をお伺いし、適切な専門家(税理士社労士司法書士行政書士弁理士)にお繋ぎいたします。

詳しくは、[クラウド顧問サービス月額2,980円|Bizer(バイザー)]まで

 

できるだけ節約してバックオフィス業務を終わらせよう

できるだけお金をかけないで会社運営に関わるバックオフィス業務(従業員、雇用、給与、賞与、役員、役員報酬、取締役、移転、株式に関する事柄など)を自分で調べながらやってみたいという方には、Bizerのユーザー様なら無料で使用できる「ToDoリスト」機能(※)をぜひご利用ください

「ToDoリスト」機能では、バックオフィス業務に必要な手続きの手順を確認したり、「いつまでに」「なんの書類を」「どの役所に提出する」のか調べたり、進捗管理をすることができます。

また、その都度、わからないところは専門家(税理士、社労士、司法書士、行政書士、弁理士)に何度でも相談できるため、できるだけ自分で金額をおさえてバックオフィス業務を完了されたい方にはオススメの機能です。

※トライアルの場合は、「ToDoリスト」機能のみ30日間無料で使用できます。
詳しくは、[クラウド顧問サービス月額2,980円|Bizer(バイザー)]まで

 

執筆者・監修者プロフィール

  • [執筆者]村田 光平(むらたこうへい)
    公認会計⼠、税理⼠、⾏政書⼠、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央⻘⼭監査法⼈、2007年に京都監査法⼈東京事務所を経て、2013年より税理⼠事務所を開業。年間50社の会社設⽴⼿続を⾏い、法務・税務の両⾯からサポートを⾏うスタートアップ企業のエキスパート。
     
  • [監修者]清水 歩(しみずあゆむ)
    司法書士。東京司法書士会所属。簡裁訴訟代理等関係業務認定会員。千代田法務会計事務所 共同代表。NPO法人事業承継相続研究会会員。登記業務はもとより事業承継、組織再編等の会社法務の相談、相続手続き、一般民事事件など多方面で適格なアドバイスを提供している。

 

Bizer(バイザー)

月額2,980円で総務、労務、経理のすべてを解決するバックオフィス業務支援サービス。