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副業などで2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合の注意点(3) ー年末調整・確定申告・住民税の特別徴収編

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前回のコラムでは、副業などで会社勤めをしながら会社の役員を兼務したり、会社員と契約社員を掛け持ちしたりするなどで、2ヶ所以上(複数)から給与所得がある場合は、次の4つの手続きなどで注意するべき点があるというお話でした。

  1. 社会保険の手続き
  2. 毎月の給料から天引きする源泉所得税の計算
  3. 年末調整・確定申告の手続き
  4. 住民税の特別徴収について

【前回のコラム】

引き続き、本コラムでは注意が必要な「3. 年末調整・確定申告の手続き」「4. 住民税の特別徴収について」について、詳しく学んでいきましょう。

 

副業で注意すべき年末調整・確定申告のポイント

 

相談者
前回のコラムの続きになるのですが、今の会社で時短勤務しながら、副業で自分の会社を起業しました。2つの会社から給与を受け取ることになるのですが、年末調整確定申告住民税などについて教えてもらえますか?


村田税理士
はい。2ヶ所以上の会社から給与をもらっている場合副業先の給与に関しては、以下の2つのうち、どちらかの方法で所得税の対応をする必要があります。

(1)「甲欄」で給与計算する会社(以降、「メインの会社」と表記)
   で副業先の給与も考慮して年末調整をしてもらう

または

(2)「乙欄」で給与計算する会社(以降、「副業先の会社」と表記)
   の給与は自分で確定申告をする

 

複数の会社から給与をもらっている場合の年末調整・確定申告の手続きは?

 

年末調整に関する資料の提出先は、メインの会社?副業先の会社?


相談者
年末調整では、家に届いた生命保険の控除のハガキや「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などを会社に提出する必要があるかと思いますが、2ヶ所以上の会社から給与をもらっている場合は、どの会社に年末調整に関する資料を提出すれば良いですか?

村田税理士
前回のコラムで説明したメインの会社「甲欄」で給与計算する会社に提出する必要があります。

また、前回のコラムの説明では省略しましたが、源泉徴収税額表の「甲欄」で給与計算をしてもらうメインの会社には、給与計算をするために必要な扶養家族の人数等を記載した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を毎年提出します。

この「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を受け取った会社は、その情報に基づき毎月「甲欄」で給与計算をして、年末調整をすることとなります。

 

【前回のコラム】
副業などで2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合の注意点② ー給与計算(源泉所得税)編


相談者
年末調整の手続き書類は、「メインの会社」に提出するんですね。

これって、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、同時に1か所にしか提出できないという決まりがあるから、副業先の会社には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要がないということですね。

だから、メインの会社に毎年「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出して、副業先の会社には、この申告書を提出しないため、『申告書の提出がない=「乙欄」』と認識されて、副業先の会社(メイン以外)の会社は「乙欄」で給与計算するのですね。

【参考】
国税庁 [手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

[備考]
国内において給与の支給を受ける居住者は、控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければなりません。この申告を行わない場合は、月々(日々)の源泉徴収の際に受けることのできる諸控除が受けられず、また年末調整も行われないことになります。また、2以上の給与の支払者から給与の支払を受ける場合には、そのいずれか一の給与の支払者に対してのみ提出することができます。


相談者
ちなみに、副業で起業した自分での会社からもらう役員報酬(副業先の給料は、年末調整しなくて良いのですか?
毎月「乙欄」で所得税を源泉していればOKでしょうか?


村田税理士
2ヶ所以上から給与(役員報酬含む)をもらっている場合、すべての会社でもらっている給与所得を合計して所得税を確定計算する必要があります。以下の2つのどちらかの方法で、複数の会社で源泉徴収された所得税を合算して、総額で正しく納税金額を算出し直す必要があります。

 

(1)メインの会社で副業先の給与も考慮して年末調整をしてもらう

 

村田税理士
副業先の会社に源泉徴収票(※)を発行してもらい、その源泉徴収票をメインの会社へ提出して年末調整をしてもらいます。メインの会社の年末調整で副業先の給与も含めて所得税を確定計算します。

副業先の会社(「乙欄」で給与計算する会社)では年末調整の計算はしませんが、源泉徴収票を発行します。

これを基に、メインの会社はその人の1年間の収入を合計して所得税を確定計算します。転職者が前職の源泉徴収票を提出するのと同様ですね。

 

源泉徴収票とは、1年間にいくら給与を支払って、いくら所得税を源泉徴収したか、社会保険料をいくら控除したかという情報を記載した資料です。

 

(2)自分で確定申告する

 

村田税理士
メインの会社での年末調整のタイミングに、副業先からもらっている給与の源泉徴収票の提出が間に合わない場合は、メインの会社の年末調整には副業先の会社からの給与が反映されませんので、自分で副業先の会社の給与を集計した確定申告をする必要があります。

 


相談者
自分で確定申告するのは、だいぶ面倒ですね。自分の会社の給与計算を早くやってしまって源泉徴収票を作って、今の会社に年末調整してもらうのが良さそうですね。

 

副業をバレにくくする方法

メインの会社に副業を知られたくない場合、前述の「(2)自分で確定申告する」の対応をすると副業がバレにくくなることがあります。

ただし、本コラムのように給与をもらうタイプの副業の場合は、確定申告を行なっても最終的には住民税の計算で副業がバレることがあります。詳しくは、後述「副業で注意すべき「住民税の特別徴収」について」をご参照ください。

また、前回のコラムでも触れましたが、複数の会社で社会保険の加入義務が発生し、社会保険料が変更される場合などは、この対応をしても副業していることは会社にバレることがあります。詳しくは、前回のコラム「副業が会社にバレやすいケースとは?」をご参照ください。

【前回のコラム】
副業などで2ヶ所以上・複数の会社から給与をもらう場合の注意点(1)—社会保険の手続き

 

村田税理士
以上が2ヶ所以上から給与(役員報酬含む)をもらっている場合の年末調整・確定申告の注意点です。

 

副業で注意すべき「住民税の特別徴収」について


村田税理士
あと、最後に複数の会社から給与をもらっている場合に注意すべき「住民税の特別徴収」について説明しますね。


相談者
給与から天引きされる住民税ですね。住民税の算出方法は前回のコラムの社会保険料の話で出てきた2つの会社で按分計算するような、複雑な計算をする感じでしょうか?


村田税理士
いいえ。こちらはメインの会社から、まとめて控除(特別徴収)することができます


村田税理士
住民税が課税される仕組みを説明すると、メインの会社も副業先の会社も、年末調整時に給与受給者(給与を支払った社員)が居住する市区町村に「給与支払報告書」(※)を提出します。

その「給与支払報告書」を元に、市区町村はその給与受給者の住民税を計算し、給与を支払う会社に対し通知をします。2016年の給与に対する住民税は2017年5月に通知、6月の給与から特別徴収(天引き)します。

簡単にいえば、メインの会社も副業先の会社も、給与を支払った金額を「給与支払報告書」に記載して市区町村へ提出しているため、市区町村がそれぞれの会社の所得を合算して、個人の住民税を算出できるということです。

給与支払報告書とは、給与受給者に1年間に支払った給与の金額等を記載した書類です。

相談者
住民税って前年分の所得が確定してから算出されるため、当年分の住民税の支払いはその年の6月からなんですよね。これが、よく、起業した翌年の住民税がキツイ。って、言われるヤツですね。

去年のサラリーマン時代の高い給与水準で住民税が課税されてしまうから、起業当初は収入がなくても支払わなければならないという・・・・。


村田税理士
それですね。で、特別徴収の話に戻りますが、「給与支払報告書を提出すると原則としてその会社から住民税が特別徴収されるようになります(個人に住民税の納税通知が来なくなり、会社が本人に代わって住民税をおさめる形式になります)。

ただ、「乙欄」の給与受給者については(副業先の会社では)、給与が少額の場合も多いので、「住民税を特別徴収しない」ことができます。

 

【参考】
千代田区の場合 特別徴収の届出書類

普通徴収が認められる場合

以下の要件に該当する場合は、申し出により普通徴収を認めます。給与支払報告書と併せて普通徴収切替理由書(エクセル:35KB)を提出してください。

普通徴収切替理由一覧

普A 総従業員数が2人以下
(下記「普B」~「普F」に該当する全ての(他市区町村分を含む)従業員数を差し引いた人数)
普B 他の事業所で特別徴収(乙欄該当者など)
普C 給与が少なく税額が引けない(年間の給与支給額が100万円以下)
普D 給与の支払が不定期(例:給与の支払が毎月でない)
普E 事業専従者(個人事業主のみ対象)
普F 退職者又は退職予定者(5月末日まで)


相談者
なるほど。「普通徴収切替理由書」という書類を一緒に提出するのですね。退職予定者なんかも特別徴収にならないように届出できるんですね。


相談者
副業で起業するときなどで、複数の会社から給与を受け取る場合に注意が必要な手続きについて良く分かりました。ありがとうございました。

 

副業がバレてしまうケース

本コラムのように給与をもらうタイプの副業の場合は、確定申告を行なっても最終的には住民税の計算で副業がバレることがあります。なお、給与をもらうタイプ以外の副業の場合は、確定申告の際に住民税の普通徴収を選択すると副業がバレにくくなることがあります。

また、複数の会社で社会保険の加入義務が発生し、社会保険料が変更される場合などは、この対応をしても副業していることは会社にバレることがあります。詳しくは、前回のコラム「副業が会社にバレやすいケースとは?」をご参照ください。

【前回のコラム】
副業などで2ヶ所以上・複数の会社から給与をもらう場合の注意点(1)—社会保険の手続き

 

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【関連コラム】

副業などで2ヶ所以上・複数の会社から給与をもらう場合の注意点(1)ー 社会保険編

副業などで2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合の注意点(2) ー給与計算(源泉所得税)編

 

村田 光平(むらた こうへい)

公認会計士、税理士 、行政書士 、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央青山監査法人、2007年に京都監査法人東京事務所を経て、2013年より税理士事務所を開業。年間50社の会社設立手続を行い、法務・税務の両面からサポートを行うスタートアップ企業のエキスパート。