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副業などで2ヶ所以上・複数の会社から給与をもらう場合の注意点(1)ー 社会保険編

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「今の会社から独立して新しい分野で起業する」って社長に伝えたら、「事業が軌道に乗るまではウチで時短勤務しながらやりなよ」って、温かい応援をしてもらえました。

当面生活費の心配なく起業に集中できるけど、よくよく考えたら「今の会社からの給与」と「自分の新設会社からの役員報酬」と、2か所から給与をもらうことになります。

私のように複数2箇所以上の会社から給与をもらうケース、起業についての本などには載ってなかったんですが注意点はありますか?



相談者
実は私、副業で起業することにしました。軌道に乗ったら事業も大きくしていこうと思って会社を作ることにしたんです。


相談者
ただ、「まだ、生活できるほどのお客さんもいないので、将来的には独立していきたい」と、今の会社の社長との業務面談で話してみたら、「今の会社で時短勤務しながら、副業で起業すればいい」って言ってもらったんです。


榊社労士
ありがたいですね。今の社長も起業するときの苦労を知っているから、独立しようという人を応援しようと思っているのでしょうね。


相談者
それで、今の会社から給料をもらいながら、自分の会社からも役員報酬(※)をもらうことになった場合などのように、2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらうときは、どういう手続きが必要になるのでしょうか?起業についての本などには載ってなくて困っています。教えてもらえませんでしょうか?

※役員報酬は、所得税法上では「給与所得」として従業員給与と同じ扱いをします。

 

複数の会社から給与をもらう場合に必要な手続きとは?

 

2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合には、以下の4つの手続きなどで注意が必要です。

  1. 社会保険の手続き
  2. 毎月の給与から天引きする源泉所得税の計算
  3. 年末調整・確定申告の手続き
  4. 住民税の特別徴収について

本コラムでは、「1.社会保険の手続き」について、詳しくみていきましょう。

 

複数の会社から給与をもらう場合、社会保険の手続きは?

 

相談者
まず、社会保険健康保険厚生年金)って、どうなるのでしょうか。今の会社で社会保険に加入していますけど、自分が設立した会社でも社会保険に加入しなければいけないのでしょうか?

2ヶ所以上複数から給与をもらっている場合は、すべての会社で社会保険に加入しないといけないのか教えてほしいです。


榊社労士
まずは、それぞれの会社で社会保険の加入条件に該当するかどうかを確認する必要があります。今の会社で時短になった場合の勤務時間と、2社からの給与の金額を教えてもらえますか?


相談者
勤務時間は、今までは10~19時(休憩1時間)の8時間勤務でしたが、平日夜にセミナーをやったりするので10~17時(休憩1時間)の6時間勤務に変更してもらいました。勤務日数は週5日のままです。


相談者
それから給与は、今の会社からは時短で月25万円、自分の会社からは月10万円にしようと思ってます。


榊社労士
そうなると、今の会社と自分の会社の両方で社会保険に加入が必要になります。


相談者
えっ、両方とも社会保険の加入が必要なんですか!?

 

 

社会保険の加入条件とは?

 

会社に雇用される場合、正社員が社会保険に加入するのはもちろんですが、契約社員、パート、アルバイト等であっても、以下の2つの条件に該当する人は、社会保険に加入する義務があります。

  • 労働時間1日あるいは1週間)・・・・一般社員の3/4以上
  • 労働日数1ヶ月間)・・・・・・・・・一般社員の3/4以上

※今回の事例では前提条件として、一般社員(フルタイムの人)の所定労働時間は、「1日8時間、1週40時間」としています。一般社員の1日の所定労働時間が7時間45分の場合は、7時間45分の3/4以上が基準となります。

※法人ではなく個人事業者で従業員が常時5名未満の場合(業種にかかわらず)や、農林水産業、サービス業などの特定の業種に属する個人事業主は、社会保険の加入は任意です。

【参考】

日本年金機構 健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険の資格取得及び配偶者等の手続き

パートタイマー・アルバイト等として雇用された場合
パートタイマー・アルバイト等が被保険者の対象になるか否かの判断は、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員の所定労働時間および所定労働日数を基準に判断することとなります。

≪判断基準≫
次の(ア)及び(イ)が一般社員の4分の3以上である場合は、被保険者になります。

(ア)労働時間
1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上

(イ)労働日数
1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上


榊社労士
なので、今の会社で、出社日数が一般社員と同様で、1日あたり6時間勤務する場合は、一般社員の3/4以上に該当するため社会保険の加入対象者となります。


相談者
う〜ん。。。今の会社で社会保険に加入するっていうのは、わかりました。ただ、自分の会社は、まだまだ起業したばかりの副業レベルでしかなく、勤務時間もほとんどないんです。勤務時間も勤務日数も社会保険の加入条件に該当しないのですが、自分が設立した会社でも社会保険に入らなければいけないのでしょうか?

 

 

会社役員は社会保険の加入義務がある

 

会社役員の場合は、労働基準法上の一般労働者には該当しないため、勤務時間・日数などに関係なく原則として社会保険の加入義務がありますただし、次の場合は例外的に社会保険の加入は対象外です。

  • 「非常勤」の役員の場合
  • 常勤の役員であっても、役員報酬が0円の場合


今回のケースでは、そもそも会社の代表者が「非常勤」という形態はとれないので、会社の代表者が役員報酬をもらう場合は、社会保険に必ず加入する必要があります。

【参考コラム】
会社の代表者は配偶者の社会保険の扶養に入れない?

会社の代表者であっても役員報酬が0円である場合は、社会保険に加入できません。無報酬の会社の代表者でも社会保険に加入したい場合は、上記コラムをご参照ください。

 

複数の会社で社会保険の加入条件を満たす場合の手続き


相談者
なるほど。私の場合は、2つの会社で社会保険(健康保険、厚生年金)に加入する必要があるということですね。そうすると、健康保険証が2枚になるってことですか?


榊社労士
いいえ。健康保険証は1枚です。安心してください。複数の会社から給与をもらっており、そのうちの2ヶ所以上の会社が社会保険の加入対象だった場合は、次の手続きを行います。

  1. 「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」の届出
  2. 社会保険の納付・負担

 

 

1.「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」の提出

 

複数の会社から給与をもらう個人が、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」に、メインとなる会社を選択して、それぞれの会社からもらう給与額を記載します。

この届は、メインとなる会社の管轄の年金事務所に提出します。提出期限は、2ヶ所以上の会社に所属することになった日の翌日から10日以内です。

現在勤務している会社がメインであれば、手元の保険証をそのまま使えますし、新しく設立した自分の会社をメインにする場合は、現在の保険証を返納して、新たに自分の会社の保険証の発行を受ける形になります。

【参考】
日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き

 

 

2.社会保険の納付・負担


社会保険料は複数の会社を加味して計算する必要があります。複数の会社の給与を合算して、各会社の給与の額に応じて按分した金額が、それぞれの会社の社会保険料となります。

今の会社から月25万円と自分の会社から10万円の給与があるとのことなので、それらの金額から社会保険料を計算してみましょう。

まずは、複数の会社の給与を合算して、合計金額から標準報酬月額がいくらになるかを確認します。

今の会社25万円+自分の会社10万円=合計35万円

合計金額の35万円で標準報酬月額がいくらになるかを判断します。

<例:東京都の標準報酬月額表>

 

東京都の標準月額表を例に健康保険と厚生年金の標準報酬月額をみると

健康保険の標準報酬月額・・・16,932円
厚生年金の標準報酬月額・・・30,909円

となります。

次に各社の社会保険料を算出します。各会社の給与の額に応じて按分した金額が、各会社で支払うべき社会保険料となります。

今回のケースでは、各社の社会保険料は、

今の会社:標準報酬月額×保険料率×25万/35万
自分の会社:標準報酬月額×保険料率×10万/35万

ということになります。

 

副業が会社にバレやすいケースとは?
(複数の会社で社会保険の加入義務がある場合)


複数の会社で社会保険の加入義務が発生した場合、副業がバレてしまうことがあるのでご注意ください。

今回のケースでは、今の会社からの了承を得て、副業として起業していますが、この「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を届出したことにより、今の会社の社会保険料が変更されることがあったときには、会社に副業していることがバレてしまうというケースもあります。

今回のケース(会社に勤めながら、副業で起業する場合)で、副業を会社に内緒にしたいときは、自分の会社の役員報酬はゼロ円でやったほうがいいかもしれません。

また、本コラムのように給与をもらうタイプの副業の場合は、最終的には住民税の計算で副業がバレることがあります。副業で注意すべき住民税については、次回以降のコラムで税理士の方に詳しく説明してもらいますね。

 

 

複数の会社のうち、1ヶ所で社会保険の加入条件を満たす場合の手続き


給与をもらっている複数の会社のうち、1ヶ所のみが社会保険の加入条件を満たしている場合は、その会社で社会保険に加入します。社会保険料の計算では、他社の給与と合算して社会保険料を計算する必要はありません。

 

 

どの会社も社会保険の加入条件を満たさない場合の手続き


榊社労士
それぞれの勤務先が社会保険の加入条件を満たしていない(勤務時間が週30時間未満など)の場合は、原則としてどの会社の社会保険にも加入できません。この場合は、国民健康保険に加入する必要があります。なお、年金は自動的に国民年金に切り替わります。


相談者
2ヶ所以上(複数)の会社から給与を受け取っている場合の社会保険の注意点については、わかりました。ありがとうございます。次に、手続きが必要な給与計算(源泉所得税)とか年末調整・確定申告について税理士さんに聞いてみようかとおもいます。

 

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>>次回のコラム「副業などで2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合の注意点(2) ー給与計算(源泉所得税)編」へ続く

 

【関連コラム】

副業などで2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合の注意点(2) ー給与計算(源泉所得税)編

副業などで2ヶ所以上(複数)の会社から給与をもらう場合の注意点(3) ー年末調整・確定申告・住民税の特別徴収編

監修者プロフィール

・榊 裕葵(さかき ゆうき)

ポライト社会保険労務士法人 社会保険労務士。上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務後、社会保険労務士として独立。勤務時代、常に経営者の側で仕事をしてきた経験も活かしながら、スタートアップ企業の労務管理体制の構築や、助成金申請の支援を積極的に行っている。  

ポライト社会保険労務士法人
http://polite-sr.com/

 

・村田 光平(むらたこうへい)

公認会計⼠、税理⼠、⾏政書⼠、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央⻘⼭監査法⼈、2007年に京都監査法⼈東京事務所を経て、2013年より税理⼠事務所を開業。年間50社の会社設⽴⼿続を⾏い、法務・税務の両⾯からサポートを⾏うスタートアップ企業のエキスパート。

 

 

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