専門家が語る

ベンチャーキャピタルからの出資がご破談に!?株主総会議事録や株主名簿を作成・管理していなかったベンチャー企業の落とし穴

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

3月決算だった会社は、5月末の決算申告お疲れ様です。ホッとしてるところ水をさすようですが、決算申告時に、「定時株主総会を開催し決算資料を承認。その後議事録を作成」しなければいけないことご存知でしたか?

 

うちの会社は株主は社長の自分1人だけだし、わざわざ株主総会議事録なんていらない・・なんて甘い!

 

事業も伸びて、ベンチャーキャピタルからの投資の話ももらって、トントン拍子で成長してきたのに、株主総会議事録をちゃんと作成していない会社は株主を大切にしていないから出資できない!?そんなの、早く言ってよ~

ベンチャー企業で見落としがちな、株主周りの書類の整備について司法書士が解説します。

 

相談者
先日事務所を移転して法務局に本店移転の申請に行ったら、株主総会議事録を出してくださいって。会社、私1人でやってるからそんな議事録なんて堅苦しいものは作ってないですって言ったんですけど、法務局担当者はかたくなに議事録がないとダメですって。どうして役所ってあんなにお堅いんですかね?

 

清水司法書士
法務局では会社の株主が誰であるかは管理していませんし、会社法に則った形で決議をされているかを確認する必要がありますので株主総会議事録などの書面を提出しないと登記の手続きができないんですよ。

 

相談者
そうなんですね。会社の移転で株主総会が必要なんて知らなかったので二度手間になってしまいましたよ。

 

清水司法書士
書類の出し直し程度で済むのであれば笑い話で済みますが、きちんと株主総会議事録を作っていなかったためにベンチャーキャピタルからの出資がご破算になってしまったようなケースもあります

 

相談者
え!ベンチャーキャピタルもそんなお役所みたいなことを言うんですか?

 

 

 

株主総会議事録を作成していなかったベンチャー企業の落とし穴

清水司法書士
株主総会議事録を作成していないということは、例えば毎年の決算報告など株主に対して説明すべきことを怠っている、株主を大切にしていない会社と見られてしまうんですね。

 

相談者
会社の事業とか将来性とか、ちゃんと中身が評価されていたのに、議事録がないっていう形式的なところでベンチャーキャピタルからの出資がダメになるなんて、理不尽すぎませんか?

 

清水司法書士
議事録がないということだけですと形式面の不備ですが、議事録がないことの原因としてはきちんと株主総会を行っていないという実体面での不備ですので、中身がちゃんとしていないと評価されてしまうんですね。

 

相談者
どんなときに株主総会が必要なんでしょうか?本店移転のときは法務局の人が教えてくれましたが、決算報告の株主総会は税務署には提出しませんから見落としちゃいますよね

 

清水司法書士
御社では取締役会がありませんので、株主総会が必要となるケースは、

(1)定時株主総会(決算承認)
 毎事業年度、決算申告前に株主総会を開催し会社の決算(計算書類)の報告・承認を行います。役員の任期が満了する場合には、合わせて定時株主総会で役員の選任(再任)決議を行うことも多いです。

<主な決議事項>
・決算の報告・承認
・役員の再任


(2)臨時株主総会
 株主総会で決議する事項が発生する都度開催されるものです。

<主な決議事項>
・本店移転
・増資・減資
・株式の売買
・役員の選任
・合併や会社分割などの組織再編
・役員報酬の改定、役員賞与の設定

 

相談者
いろいろとあるんですね、イメージとしては会社にとって重要なことは株主総会での承認が必要ということで気をつけます。

 

 

株主名簿を作成していなかったベンチャー企業の落とし穴

清水司法書士
似たような話として、株主名簿を作成していなかったための落とし穴もあります。

 

相談者
議事録の他にも落とし穴があるんですね。。

 

清水司法書士
社長が1人で出資して作った会社と思っていたら、よくよく設立時の書類を見直すと親戚の会社から出資してもらって設立した会社であったことが判明し、会社の運営にその親戚の会社の承諾が必要だったりすることがあるんですよ。

 

相談者
設立の資金がなくて親戚関係から設立資金を集めるケースは結構聞きますね

 

清水司法書士
この場合ですと親戚の会社が親会社になりますので、ベンチャーキャピタルからすると出資したお金が親会社に吸い上げられるリスクもありますし、出資の判断がやり直しになる場合もありますね

 

相談者
なるほど、、まあ株主が誰なのか管理できていない時点で株主総会もちゃんとできていないですからね。

 

 

ベンチャー企業が普段事業運営する中では、株主という存在はあまり意識する機会もないですが、株式会社の本来の目的は株主のために利益を上げていくことになります。株主総会議事録や株主名簿など、株主関係の書類の作成もしっかり行っていくように心がけましょう。

 

清水 歩(しみず あゆむ)

司法書士。東京司法書士会所属。簡裁訴訟代理等関係業務認定会員。千代田法務会計事務所 共同代表。NPO法人事業承継相続研究会会員。登記業務はもとより事業承継、組織再編等の会社法務の相談、相続手続き、一般民事事件など多方面で適格なアドバイスを提供している。