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特許取得できる可能性は?IoT関連技術の知財保護に活路を見出そう

モノとモノとがインターネットを介して繋がり、新たな価値を生み出すIoT(Internet of Things)がものすごい勢いで構築され、市場で広がりを見せています。
その広がりの背景には、ビッグデータ解析技術や人工知能(AI)技術の進展があると言われていますが、最近では、新聞の紙面で記事を見かけない日がないほど、多様な用途での活用が繰り広げられています。

また、第3次AIブームとも呼ばれていますが、この人工知能(AI)についても、単なるブームで終わらず、様々な用途で活路を見出すのに寄与しており、両者は、「第4次産業革命」の到来をも予見させる勢いで日々技術進歩していますね。

いずれAIは、現在の商業人の大半の仕事を奪ってしまうのではないかとささやかれております。
しかし、ポジティブに捉えれば、AIにしても、IoTにしても、様々な用途に活用されるということは、そこに必ず「技術的な一工夫」が施される訳ですから、もしかしたら、そこにたくさんの「発明」が生まれていることを、私たちは日常の活動の中で見逃しているかもしれません。

そこで以下では、IoT関連発明について、どのような場合に特許取得できる可能性が高まるのかお話させて頂きます。

IoT関連発明について特許が認められる場合とは

まず一般に、特許が認められるためには、主に以下の要件を満たすことが求められます。

・発明に該当すること (発明該当性)
・新しいことこと (新規性)
・進歩していること (進歩性)

では、IoT関連技術については、どのような場合に「法上の発明に該当する」ものであると認められるでしょうか。
特許庁が「審査ハンドブック付属書A」で挙げているIoT関連発明の事例とともに紹介いたします。

特許発明の技術的範囲(権利の効力範囲)は、出願原稿の記載欄のうち、【特許請求の範囲】という記載欄の記載により定まるのですが、【特許請求の範囲】には【請求項1】【請求項2】・・・といった具合に、所定の要件を満たすことを条件に、複数の発明を記載することができます。
例えば、権利範囲を特定する【請求項1】に以下の記載があります。

『ネットワークを介して外部サーバと通信可能な電気炊飯器の動作方法であって、前記外部サーバから、複数のユーザの炊き方の好み、帰宅時間及び内食の有無に関する情報を受信するステップと、前記帰宅時間及び内食の有無に関する情報に基づいて、内食の予定があるユーザのうち、最速のユーザの帰宅時間の直前に炊飯が完了するよう、炊飯の開始時間を設定するステップと、前記炊き方の好み及び内食の有無に関する情報に基づいて、内食予定の複数のユーザの炊き方の好みを最適化した炊き方で、炊飯を実行するステップと、を含む、電気炊飯器の動作方法。』

(特許庁 『審査ハンドブック付属書A』 3.1発明該当性 事例4-2より引用)

この発明は、外部からリモート操作で、帰宅時間及び内食の有無、炊飯の開始時間、炊き方を制御するもので、典型的なIoTネットワークを活用した家電制御に関するものとなっており、同ハンドブックによれば、これは法上の発明に該当すると判断されています。
その理由は、『電気炊飯器が炊飯を実行するための制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの』に相当するからだそうです。

つまり、IoT関連技術についても、従前のコンピュータソフトウェア関連発明に関する基準を適用するのが前提でありますが、ソフトウェアとハードウェアとの協働とすることによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又は動作方法が構築されている場合には、「発明」に該当すると判断されるようです。

「発明」に該当するだけでは特許は取得できない

では、発明に該当する場合には直ちに特許が認められるかというと、そうではありません。
既に発明の内容が公表等されている場合や、先行する特許文献等から容易に思いつくレベルの発明である場合には、やはり特許として認められません。

ここで、3つ目の要件の「進歩性」については、「IoT関連発明では、引用発明との相違点に関し、「モノ」がネットワークと接続されることで得られる情報の活用による有利な効果が認められる場合、進歩性の判断において、当該効果を「進歩性が肯定される方向に働く要素」の一つとして考慮する(審査基準第III部第2章第2節より引用)」とありますので、特許化を進めるにあたっては、「情報の活用」の視点で進歩しているポイント等を各種提出書類でも強調するとよいでしょう。

知財活動で活路を見出そう

IoTの進展により、家電製品を中心としたモノとモノとがインターネットを介して繋がることで、新たなサービスモデルが今後、続々と誕生することが予想されます。
そのようなサービスモデルについて、サービスそのものについては、特許化は厳しいものの、それを具現化している「ITシステム」については、前述した要件を満たせば、特許化の途が広がってまいります。

製造業に限らず、サービス業の方々も、自社が新たに構築したサービスモデルを支える「ITシステム」についての知財保護意識を持つことは極めて重要になってくると思います。
前述した基準に照らして、特許の可能性をスクリーニングして、身近な弁理士に早いタイミングでご相談いただくのが、企業戦略上も極めて重要な取り組みの一つとなることは間違いありません。
是非、そのような意識を自社内に浸透させてください。

須田 浩史

弁理士。東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科 技術経営修士(MOT) 特許業界で25年、担当した特許出願は1500件を超える。昨年は、1年間に数多くのお客様の発明相談を担当。お客様の目線にあったサービスを心情としている。