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資金調達で『株主総会』忘れが致命傷に!?株主総会はいつするべきか?—利益相反取引編

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外部のベンチャーキャピタル(以降、VCと表記)から資金調達することになりました。これからは、より一層、会社の社会的責任を感じながら経営していこうと思います。早速、社労士と顧問契約も締結して就業規則も整備しました。

労務関係はこれでバッチリと胸を張って、投資先のVCに伝えたら株主関係の事柄も、きちんと法律順守してください。」とクギを刺されました。なので、今のウチの会社で、ちゃんと出来ていない事がないか、専門家に診断してもらうことにしました。

 

VCによるデュー・デリジェンス(投資前の調査)で重視される株主総会とは!?

相談者
今度、ウチの会社がVCから資金調達を受けることになり、会社の財務状況や法律を守っているのかといった調査が入ることになりました

 

村田税理士
資金調達にあたって、ベンチャーキャピタルが御社の株価を算定したり、投資先として法律違反や不適切な契約などをしたりしていないかを調査して、投資するかどうかの判断をします。これを「デュー・デリジェンス」と呼ぶのですが、まさにそのデュー・デリジェンスが実施されたのですね。

 

相談者
はい。それで、今までしっかりできていなかった労務関係を整備するために社労士と顧問契約して、勤怠管理を整備したり、まだ従業員数も少ないですけど、就業規則を策定してもらったりしています。

 

村田税理士
労務関係は、しっかりとした会社になりそうですね。他に調査にあたって心配な点はありますか?

 

相談者
はい、「株主総会をしっかりと開催しているかどうか」を質問されました。事前に調査する専門家へ弊社の会社の「決算書」や「試算表」を提出したのですが、「いくつかの株主総会議事録を出してほしいと言われまして・・・

 

村田税理士
株主総会、しっかりと実施していなかったものがあったのですね。


相談者
しっかりと実施しなかったというか、「株主総会」って、そんなに頻繁に実施するものだと思わなかったのと、以下のような3つのケースが会社法上の利益相反取引に該当するとは知らず、株主総会をやる必要があるなんて・・・。まったく知りませんでした。

1)会社から取締役への貸付け

2)取締役から会社への貸付け

3)代表取締役が兼務する別会社との取引

 

村田税理士
そうですね。それぞれのケースで、詳しくみていきましょうか。

 

ケース1:会社から取締役への貸付け

 

相談者
まず1つ目に指摘されたのが、決算書の中の「役員貸付金」という項目です。これは、会社が軌道に乗るまでは、自分の役員報酬は生活費ギリギリでいいって、低く設定していたのですが、どうしても賃貸アパートの更新料が足りず、役員報酬からも補えなくなって、仕方がなく会社からお金を借りました

 

村田税理士
それは、「会社から取締役へ資金を貸付ける」という典型的な利益相反取引ですね。

 

【参考コラム】
利益相反取引については、以下のコラムをご参照ください。
会社役員が副業しても大丈夫!?未然に防ぎたい法的リスクとは?

 

相談者
会社と取締役との取引で、会社の利益を犠牲にして取締役が利益を得るおそれのある取引ということらしいですね。でも、私はちゃんと金利も払っていますけど、それでも会社が不利益になる可能性のある取引になるのでしょうか?

 

村田税理士
例えば、会社が銀行から金利2%で借入をしているのに、取締役には1%の金利で貸付けをしたり、取締役が長期間資金を返済しなかったりするなど、会社が損害を受けるリスクがあります。このように会社から取締役(個人)へお金を貸し付けた場合は、利益相反取引に該当し、株主総会でのチェック・決議が必要となります。

 

ケース2:取締役から会社への貸付け

 

相談者
ケース1とは逆に、会社の資金繰りが苦しいとき、他の取締役から会社に資金を貸付けしてもらった際に計上した決算書の「役員借入金」の項目に対しても、「株主総会議事録を見せて欲しい」って言われました。

会社のために自分(個人)のお金を貸してあげているのに、なぜ株主総会で了解を得ないといけないんでしょう?

 

村田税理士
銀行はお金を貸して商売をしていますよね?

 

相談者
金利で利益をあげるのが銀行の商売ですからね。

 

村田税理士
同じように取締役が会社に資金を貸すことで、金利の設定によって「会社の利益を犠牲にして取締役が利益を得るおそれのある取引」となるため、株主総会での承認が必要となるのです。

 

相談者
そんなこと言われるくらいなら、金利は無くてもいいのだけど・・・

 

村田税理士
無利息無担保会社に取締役(個人)のお金を貸す場合は、会社が不利益を受けるおそれがないので株主総会での承認は不要という判例があります。

 

裁判所最高裁判例情報 事件番号昭和37(オ)437

判示事項
無利息無担保の金銭消費貸借は商法第二六五条にいう取引にあたるか。

裁判要旨
株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、商法第二六五条にいう取引にあたらない。

 

相談者
なるほど。取締役(個人)から会社へ資金を貸付けする場合も、「金利ゼロ」で「無担保」であれば株主総会も必要ないのですね。金利ゼロ、無担保で貸付ければ、こういう資金調達のときに「株主総会をやっていなかった」とかで不備とならないので安全ですね。

 

村田税理士
ただ、取締役から会社への資金の貸付けが多額の場合資金調達でVCが出資した資金が、事業の成長のためでなく取締役(個人)への資金の返済のために使われてしまうので、VCが出資を嫌がって資金調達が困難になるケースもあります。ご注意ください。

 

ケース3:代表取締役が兼務する別会社との取引

 

※上図のケースは、両社とも利益相反取引になるため、A社、B社ともに株主総会決議が必要です。

相談者
最後に、私、2つの会社の代表取締役を務めているのですが、このケースでもう少し相談させてください。私が代表取締役を務める別の会社との取引です。私(個人)との取引だけでなく、私が代表取締役を務める会社との取引までも利益相反取引になって株主総会での承認が必要なのでしょうか?

 

村田税理士
会社法の利益相反取引の規制は、会社と取締役との直接取引だけでなく、取締役がその地位を利用して第三者の利益を図るような間接取引も規制されています。そのため、このケースも利益相反取引に該当し、株主総会での承認が必要となります。

 

会社法第356条 競業及び利益相反取引の制限

(競業及び利益相反取引の制限)

第三百五十六条
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

 

村田税理士
会社Aの代表取締役は会社Aの利益のために働く義務があります。でも、この代表取締役は会社Bの人間です。ということになると、この会社Bとの取引は実は会社Aのためではなく会社Bの利益のためにやっているのでは?とも考えられます。

 

相談者
なるほど、代表取締役の権限を濫用すれば自分や関係者に利益を誘導できるので、取引をする前に株主総会でのチェックが必要ということですね。

 

村田税理士
はい、B社のほうも同様ですね。
相談者
ちなみに、取引内容は毎月のWebサーバーの利用だけなのですが、毎月株主総会をしないといけないのでしょうか?

 

村田税理士
利益相反取引の承認については実務上、反復・継続的な取引についての包括的な承認通常は1年以内の期間についての承認)も認められています。

 

日本監査役協会 「中小規模会社の監査役監査チェックリスト【改訂版】」中部支部監査実務チェックリスト研究会(その他報告)

No.1308. 競業及び利益相反取引のチェックリスト

 

VCから出資を受けた場合は、取締役が複数の会社で兼業することが難しくなる!?

村田税理士
ちなみに、VCからの出資を受ける場合には、「代表取締役」や「キーマンとなる取締役」が複数の会社で兼業していると、他の会社との兼業を解消してVCから出資を受ける会社の事業に専念するように、投資契約書の締結を求められることが多いです。

将来的にVCからの出資を検討しているベンチャー経営者は、安易に他社の非常勤取締役などを引き受けると資金調達をするときの障害となる可能性がありますので気を付ける必要があります。

 

相談者
なるほど、スタートアップの会社だからって、なんとなく会社経営していると思わぬ落とし穴があるのですね。専門家に相談しながら、正しい知識を身に付けて株主総会も漏れなく行っていくように頑張ります。

 

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村田 光平(むらた こうへい)

公認会計士、税理士 、行政書士 、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央青山監査法人、2007年に京都監査法人東京事務所を経て、2013年より税理士事務所を開業。年間50社の会社設立手続を行い、法務・税務の両面からサポートを行うスタートアップ企業のエキスパート。