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個人事業主からの請求書の「源泉徴収額」って何?一人会社の社長がおさえておきたい源泉所得税のあれこれ。

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こんなケースありませんか??

会社を設立してWebサービスを作っています。

個人事業主のデザイナーさんからの請求書で「源泉徴収額」って記載されて10%くらい値引きされていて、何だか分からないけど得したってことでいいのかな?!

え、この源泉徴収額はうちの会社が払う税金?何でデザイナーさんの所得税をうちの会社が払うんですか?全然意味がわかりません!!!

 

 

この疑問にお答えすべく、Bizer認定税理士さんに解説してもらいました!

 

1.源泉徴収って何ですか?


相談者
個人事業主のデザイナーさんからもらった請求書に「源泉徴収額」って記載されていて、何だかよく分からないけど10%くらい値引きしてくれてて、スタートアップのうちみたいな会社にはありがたかったですね~。
村田税理士
それは値引きではなくて「源泉徴収」といって、個人事業主の所得税を天引き(源泉徴収)して御社が納税するものとなります。
従業員の給与を支払うとき、所得税を天引きして従業員の代わりに納税しているのと一緒です。

 

相談者
あ、値引きではないんですね。確かに自分がサラリーマンの時には会社が税金のことは全部やってくれていましたけど、従業員でもない個人事業主の手続きもうちの会社がやらなきゃいけないんですね。。
村田税理士
会社は役員や従業員に給与を支払い源泉徴収をする義務がありますので。
相談者
うちは役員私1人だけの会社だし、まだ役員報酬も0円なので源泉徴収、やらなくてもいいんじゃないですか?
村田税理士
源泉徴収が免除されるのは、個人事業主で従業員を雇っていないような場合だけです。会社の場合は源泉徴収が免除されることはありません。

源泉徴収義務者を確認する!

(国税庁タックスアンサー No.2502 源泉徴収義務者とは

 

相談者
分かりました。それじゃしっかり源泉徴収をやりたいと思いますが、請求書からいくらを天引きすればいいんですか?
村田税理士
請求額の10.21%(請求額が100万円以上の場合は20.42%)が源泉徴収額となります。
相談者
ずいぶん中途半端な%ですね。
村田税理士
昔は10%だったのですが、復興特別所得税(0.21%)も加算されて現在の源泉徴収税率となっています。

 

※個人事業主に10万円で仕事を依頼した際の請求書サンプル

請求書サンプル

 

相談者
このデザイナーさんの請求書、よく見ると消費税抜きの金額の10.21%が源泉徴収額になってますね。請求額は消費税抜きの金額ってことですか?
村田税理士
請求書に消費税抜きの金額と消費税額とが明記されている場合は、消費税抜きの金額を源泉徴収対象額とすることができます。

源泉徴収額の計算で細かい点を3点。

(1)請求書等で消費税抜きの金額と消費税額とが明確に区分されている場合は、消費税抜きの金額を源泉徴収対象額とすることができる。

(2)計算した源泉徴収税額の小数点以下は切り捨て

(国税庁タックスアンサー No.6929 消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税

(3)報酬とともに経費も請求されている場合、

   ①登録免許税など、事業者が本来支払うべき経費は源泉徴収の対象外

   ②交通費などの個人事業主が支払った経費を請求する場合は源泉徴収の対象

(国税庁タックスアンサー No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金

 

2.こっちの請求書には源泉徴収額がないですけど、、


相談者
もう1つ、よく分からなかったのがコーディング作業をしてもらった個人事業主からの請求書には源泉徴収額はなくて、このコーダーさんは源泉徴収のことを理解してないって事なんでしょうか?
村田税理士
実は個人事業主からの源泉徴収でややこしいのが、業務の種類によって源泉徴収をするものとしないものとがあるんです。

これって源泉徴収が必要?源泉徴収が必要な一覧

(国税庁 源泉徴収のあらまし2015年

 

村田税理士
デザイナーは「デザインの報酬」として源泉徴収が必要ですが、プログラミング・コーディングはこの国税庁が定める源泉徴収が必要な報酬には含まれていません。
相談者
あかん、もう覚えきれません。。
村田税理士
全部覚えるのは難しいですが、源泉徴収が必要なもののイメージとしては専門的な知識・技能を使った(a)クリエイティブな業務と、(b)会社の経営サポートです。
相談者
なるほど、(a)クリエイティブな業務のほうはデザインとか、原稿料、講演料、モデル料とかですね。
村田税理士
あとメジャーなところでは写真(カメラマン)の報酬ですね。
相談者
(b)会社の経営のサポートのほうは、税理士とか士業の報酬と経営コンサルタントあたりですね。
村田税理士
士業の源泉徴収で注意する点は3つです。
(1)税理士法人など、法人への支払の場合は源泉徴収の対象外
(2)行政書士の報酬は源泉徴収の対象外
(3)司法書士報酬の源泉徴収額は、報酬から1万円を引いて源泉徴収額を計算

相談者
そうか、源泉徴収は「個人の所得税」の源泉徴収だから法人への支払では関係ないんですね。司法書士のイレギュラーな計算方法は間違えちゃいそうです。

 

村田税理士
さすがに司法書士が作る請求書ではきちんと計算されていると思いますので大丈夫です。

 

3.源泉所得税はどうやって納税するの?


相談者
このデザイナーさんの報酬から源泉徴収した所得税はいつ納税すればいいのでしょうか?
村田税理士
毎月、デザイナーさんに報酬を支払った翌月10日までに納税となります。
相談者
あ、そういえばうちの会社は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しているから、源泉所得税の納税は毎月でなくて半年に1回でいいんですよね

源泉所得税の納期の特例についておさらい!

https://bizer.jp/archives/2027

 

村田税理士
納期の特例は、給与の支払と、税理士等への報酬の支払(第204条第1項第2号の報酬・料金)だけが対象なので、デザイナーさんの報酬は原則どおり毎月納税しないといけません。

(国税庁タックスアンサー No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

(※)この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税に限られています。

納税のカレンダー

 

村田税理士
先ほどの(b)会社の経営のサポートのほうの報酬は、いわゆる会社の顧問として従業員の給与と同じような扱いとなっている感じですね。
相談者
そういえば、税務署で源泉所得税の納付書をもらってきた時、いろんな種類の納付書がありました。
村田税理士
給与・税理士等への報酬についてはこちらの納付書で、デザイナーなどの税理士等以外への報酬の場合はこちらの納付書を使います。

 

4.報酬の支払調書って何?


相談者
デザイナーさんから、年末には「報酬の支払調書」をよろしくって言われたんですが、まだうちの会社でやらなきゃいけないことがあるんでしょうか?
村田税理士
もう少し、これで最後です。会社はその個人事業主に1年間(1~12月)に支払った源泉徴収対象となる報酬が5万円以上の場合、「報酬の支払調書」というものを税務署に提出します。
相談者
誰にいくら払っていくら源泉徴収したかが記載されてて、従業員がもらう源泉徴収票のようなものですね。
村田税理士
はい、そのイメージです。この報酬の支払調書は、本来的には税務署に提出するのみで、個人事業主に交付する義務はないのですが、個人事業主が確定申告するのに便利なので、実務的には個人事業主さんには報酬の支払調書を交付してあげることが多いです。
相談者
なるほど、個人事業主への源泉徴収の一連の流れがよく分かりました。

 

以上となります。最初は複雑と感じるかもしれませんが、会社運営する上で避けては通れない部分なので、この機会に理解を深めてくださいね!

 

 

 

村田 光平(むらた こうへい)

公認会計士、税理士 、行政書士 、公益社団法人日本監査役協会会員。2005年に中央青山監査法人、2007年に京都監査法人東京事務所を経て、2013年より税理士事務所を開業。年間50社の会社設立手続を行い、法務・税務の両面からサポートを行うスタートアップ企業のエキスパート。